プリキュアになりたかった「コミュ力ゼロ」の女の子、遠藤有栖はなぜプロレスに輝く場所を求めたのか (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

「ユカさんは本当に大きかった。体もそうですけど、対角に立った時の余裕とか、いろんな意味で大きかったです。私が持っているものすべてを出したら、すべてを受け止めてくれました。結果は惨敗でしたが、ユカさんのように私も大きくなりたいと思った。元から練習は好きなんですけど、そこからさらに練習するようになりましたね」

 有栖の練習量はすさまじかった。誰よりも努力した。しかし、試合ではあと一歩というところで負けてしまう。「自分はなんでこんなに弱いんだろう......」と落ち込んだ。

「相当病みました。たぶん学生時代だったら立ち直れなかったと思います。でも、朝起きたら『ヤバい、ジム行かなきゃ!』という切り替えはできていた。あんなに悔しい気持ちになったのは人生で初めてでしたね」

 デビューから1年後、2022年1月4日。後楽園ホール大会で、有栖は鈴芽と組んで桐生真弥&宮本もか組と対戦。有栖と鈴芽は「ありすず」と呼ばれ、息の合った合体攻撃も素晴らしかった。有栖は宮本からフォールを奪い、ついに自力で初勝利をつかんだ。初めて試合後に自分の入場曲が流れるのを聞いて、泣いた。

 周囲のありすずへの期待は急速に高まっていった。しかしこの時、有栖の心の中に暗い影が生まれ始めていた――。

(後編「この人じゃなきゃダメだ」。「バディ」鈴芽との絆で手にしたタッグの頂点>>)

【プロフィール】
遠藤有栖(えんどう・ありす)

1998年4月27日、福島県会津若松市生まれ。2019年3月、WRESTLE-1公式サポーターのアイドルグループ「Cheer♡1」に加入。2021年1月4日、東京女子プロレス後楽園ホール大会にてプロレスデビュー(対鈴芽)。2022年7月22日、会津若松市観光大使に就任。10月21日、会津若松市で凱旋興行を開催し、超満員札止め。2024年2月10日、鈴芽とのタッグ・「でいじーもんきー」で「第4回"ふたりはプリンセス"Max Heart トーナメント」初優勝。3月31日、両国国技館大会にて、水波綾&愛野ユキが持つプリンセスタッグ王座に「でいじーもんきー」で挑戦し、勝利。第16代王者となる。150cm。

【大会情報】
■大会名:SUMMER SUN PRINCESS'24
■日時:2024年7月20日(土)開場10:00 開始11:00
■会場:東京・後楽園ホール
■対戦カード:プリンセスタッグ選手権試合 30分一本勝負
<王者組>鈴芽&遠藤有栖 vs 荒井優希&宮本もか<挑戦者組>

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著者プロフィール

  • 尾崎ムギ子

    尾崎ムギ子 (おざき・むぎこ)

    1982年4月11日、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業後、リクルートメディアコミュニケーションズに入社。求人広告制作に携わり、2008年にフリーライターとなる。プロレスの記事を中心に執筆し、著書に『最強レスラー数珠つなぎ』『女の答えはリングにある』(共にイースト・プレス刊)がある。

【写真】「でいじーもんきー」遠藤有栖 撮りおろし&試合フォトギャラリー

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