プリキュアになりたかった「コミュ力ゼロ」の女の子、遠藤有栖はなぜプロレスに輝く場所を求めたのか (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

 運動が得意で、小学校3年生から高校3年生まで、9年間バスケットボ―ルに明け暮れた。人と接することは苦手だったが、バスケが楽しすぎてチームプレーは苦ではなかった。「将来、プロ選手になりたい」という夢もできた。

 他にもたくさん夢があった。プリキュアになりたい、ネイリストになりたい、母を癒すためにエステティシャンになりたい。しかし、人と関わることがあまりにも苦手で、「人生どうなるんだろう......」と思い悩んだ。

「コミュ力がなさすぎて、会話が続かないんです。間が持たないから、人と会話をするのが苦しかった。友だちと話す時も自分のことはあまり話せなくて、いつも聞き手に回っていました」

 高校1年生の時、プロレス好きの父に連れられ、WRESTLE-1の試合を観に行った。初めて目にする殴り合い、会場に響き渡る大きな音、観客の怒声......。怖くてたまらず、試合を直視できなかったという。弟もプロレスが好きで、弟からレスラー同士の関係性やストーリーを教えてもらううちに、少しずつ興味が湧いた。

 しかし有栖がプロレス以上に夢中になったのは、WRESTLE-1公式サポーターのアイドルグループ「Cheer♡1(チアワン)」だった。大会前、リング上で歌と踊りを披露する彼女たちに憧れ、物販にも足を運んだ。そんな有栖を見ていた父がチアワンに履歴書を送り、有栖はオーディションを受けて合格。2019年3月、晴れて憧れのアイドルグループのメンバーとなった。

【チアワン活動休止。グラビアアイドルに転身】

 かねてから、高校卒業後は上京しようと考えていた。大好きな俳優の仲里依紗に会いたかったからだ。モデル出身でオシャレな彼女のInstagramを見て、それまで黒い服ばかり着ていたがカラフルな服を着るようになった。黒かった髪も明るく染めた。仲里依紗が「109の店員さんになりたい」と言っているのを聞いて、有栖もアパレルでアルバイトをした。仲里依紗に会いたいがために、舞台にも挑戦した。

 仲里依紗がプロデュースするアパレルブランド「RE.(アールイードット)」のポップアップストアに行った時、ついに本人に会うことができた。洋服をコーディネートしてもらい、髪色も褒めてもらった。チアワンの活動も楽しい。仲里依紗にも会うことができた。「東京に出て来て本当によかった」と思った。

 しかし、WRESTLE-1は2020年4月1日に活動休止となり、公式サポーターとして活動するチアワンも無期限活動休止となる。有栖にとってようやく人前に出ることができた奇跡の場所が、わずか1年でなくなってしまった。

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