プリキュアになりたかった「コミュ力ゼロ」の女の子、遠藤有栖はなぜプロレスに輝く場所を求めたのか (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

「マジで『これから先どうしよう......』と思いました。また元の自分に戻ってしまうんじゃないかと考えると、涙が止まらなかった。『やっとひと皮剥けた』と思ったのに、また殻に閉じこもるのが怖かったです」

 とにかく人前に出なければいけないと思い、グラビアの仕事を始めた。グラビアアイドルとして『水曜日のダウンタウン』に出演し、逆ドッキリを仕掛けられて話題にもなった。しかしカメラの前でポーズを取るのが苦手で、グラビアの仕事はあまり好きではなかったという。

 そんなある日、何気なくSNSを見ていると、チアワンの先輩・才木玲佳の試合映像が流れてきた。「闘う女の子ってカッコいい!」と思った有栖は、すぐにマネージャーと共に東京女子プロレスの観戦に行く。同世代の女の子たちがキラキラ輝きながら闘う姿に感動した。最初に好きになったレスラーは、鈴芽。

「可愛かったし、速い選手が好きだったんですよ。マネージャーに『この方ってどれくらいのキャリアですか?』と聞いたら、『最近デビューした子』と言われて衝撃を受けました」

 マネージャーの勧めもあり、有栖は東京女子プロレスに入門することを決めた。

【初期メンバーの坂崎ユカに惨敗も「私も大きくなりたい」】

 運動は得意だったため「なんでもできるはず」と意気込んでいたが、いざ練習が始まるとできないことのほうが多かった。受け身の練習は痛くてたまらず、ロープワークの練習では背中にくっきりロープの痣ができた。当時はグラビアの仕事も続けていたが、撮影会では必死に痣を隠した。

 デビュー戦は2021年1月4日の後楽園ホール大会。東京女子プロレスに練習生として入門して、わずか2カ月後のことだった。対戦相手は、憧れの鈴芽だった。

「最初に惹かれた人と、デビュー戦からシングル。『運命なの?』って。まあ、当時はそこまで思っていなかったけど、今振り返ったら運命だったのかなと思います」

 落ち着いた表情で、ドロップキック、エルボー、カニばさみ......練習した技を丁寧に繰り出していく有栖。才木玲佳の得意技であるキャメルクラッチも披露した。鈴芽がロープエスケープしようとすると、その腕をフック。デビュー戦とは思えぬ闘いぶりを見せたが、鈴芽の必殺技リング・ア・ベルに敗れた。

 その後、辰巳リカ、中島翔子といった初期メンバーとのシングルを経て、5月15日の板橋グリーンホール大会で、やはり初期メンバーの坂崎ユカとシングルが組まれた。この試合が、有栖にとってひとつの転機となる。

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