全日本プロレスが能登に届けた「元気」 選手会長・宮原健斗らがチャリティ大会で見せた普段どおりのファイト (3ページ目)

  • 松岡健治●取材・文・撮影 text & photo by Matsuoka Kenji

【熱気に包まれる会場】

 迎えた大会当日。開場は午後5時半だったが、3時すぎには体育館の周辺にファンが列を作った。七尾市はもちろん、金沢市、さらには東京から訪れたファンもおり、開場までにその行列は100mほどの長蛇になった。入口では、大会開催に賛同した『高橋創税理士事務所』の協力で作った、団体ロゴに「がんばろう!能登 石川」というメッセージ、選手のサインが入ったはがきサイズのステッカーを配布した。

 試合開始時刻の6時半には用意した椅子席が満席となり、二階席も開放した。入場者数は発表しなかったが、会場は男女を問わず、お年寄りから子供たち、家族連れなど幅広い年齢層のファンで超満員となった。

 入場無料のチャリティマッチ。宮原が誓ったことは「いつもと同じ全日本プロレスを見せる」ことだった。

「一番大事なことは、普段と同じようにしっかり練習をして準備をすることです。そして僕の今日のテーマは、いつもどおりの僕をお届けすること。普段と変わらない宮原健斗を、能登のみなさまにすべてお見せします」

 全日本のキャッチフレーズは、1990年代から「明るく楽しく激しく」で一貫している。30年あまり貫いてきた"王道プロレス"をそのままを届けることが、被災者への最大限の誠意。宮原の言葉は、全4試合に出場したすべてのレスラーに共通した思いだった。

 試合前には三冠ヘビー級王者の安齊勇馬、宮原がサイン会を行ない、第一試合で世界タッグ王者の「斉藤ブラザーズ」斉藤ジュン&レイは、大森北斗・羆嵐を相手にいつもと変わらぬパワーファイトを展開して会場をどよめかせた。

 第二試合は芦野祥太郎と立花誠吾によるシングルマッチ。真正面からぶつかる熱いファイトで客席を沸かし、第三試合の諏訪魔・田村男児・吉岡世起vs綾部蓮・鈴木秀樹・阿部史典の6人タッグマッチでは、諏訪魔がド迫力のラストライドで阿部をたたきつけると、大きな拍手が起こった。それらの全試合で、戦いを終えたレスラーはマイクを持って「みんなで力を合わせて頑張ろう」とメッセージを送った。

 迎えたメインイベント。宮原は、青柳優馬、MUSASHIと組み、安齊、本田竜輝、ライジングHAYATOと対戦した。リング上では「激しい」戦いを展開したが、いつも以上に観客に声をかけるなど「元気を届ける」という思いを体全体で表現した。

 試合中、宮原は場外乱闘で本田を羽交い絞めにすると、客席の男子小学生にチョップを要求。思いもよらぬレスラーからの言葉に少年は戸惑ったが、宮原、さらに客席からの拍手に後押しされて立ち上がり、本田の胸にチョップを叩き込んだ。

 観客がレスラーに手を出すことは、通常の大会ではもちろんご法度だが、チャリティ大会ならではの"サービス"に、会場はこの日一番の歓声で包まれた。試合は、安齊が必殺技「ギムレット」でMUSASHIを倒し、三冠王者の貫禄を見せつけた。

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