全日本プロレスが能登に届けた「元気」 選手会長・宮原健斗らがチャリティ大会で見せた普段どおりのファイト (4ページ目)
【それぞれの感謝】
熱戦の連続に活気がみなぎった体育館。マイクを持った宮原が「最後まで応援ありがとうございました!」と感謝を伝えると、客席から大きな拍手と「ありがとう!」の言葉がリングに注がれた。
さらに宮原は、「俺たちプロレスラーはこのリング上から、見ている人たちに元気を届けるべく明日からも戦っていく。みなさまに会えるのを楽しみにしてるぜ」と続け、「今日はチャリティ大会。せっかくだ、未来ある子供たちとリング上で写真撮ろうじゃないか。子供たち、リングに集合だ」と、観戦した子供たちをリングに上げた。そして、メインイベントに出場した6選手との記念撮影を行なった。
試合後、バックステージで宮原はこう噛みしめるように語った。
「ここ石川に、俺たち全日本プロレスは何かを届けたい思いでここに来た。元気を届けたつもりが、俺たちが元気をもらったような気がする。俺たちレスラーは、いろいろ言葉で言ったとしてもこの体で表現するしかないからね。それを見ている人たちに、どんな形でも、明日からの活力になってくれたらうれしいですね」
宮原に促されて本田にチョップを見舞った男子小学生は両親、妹と観戦しており、大会後には「楽しかった」とはにかんだ。住まいは会場に近く、父親によると元日の地震発生後は、七尾市田鶴浜体育館が避難所になったため「家族でここに避難して一晩を過ごしました」と明かしてくれた。
体育館は3月3日まで避難所となり、多くの七尾市民が生活をともにした。男子小学生の一家は一晩で自宅に戻ったが、父親は「元日に避難したこの場所で、5カ月後の今日、プロレスを観戦して元気をいただきました。本当にありがたいことです。感謝しています」と感謝を語った。
約1万5000戸の家屋が損傷するなどの被害を受けた七尾市。リングサイド最前列で観戦した70歳の男性は、自宅が一部損壊して今も回復していないことを明かし、「なかなか復興は進んでいませんけど、今日は元気づけてくれてありがたいです」と笑顔を見せた。また、プロレスファンになって2年目という七尾市に住む40代の女性は、3月末まで断水で不便を強いられたという。
「地震があってからプロレスを観に行く気力がなかったんです。奥能登は今も大変ですし、『自分が楽しんでいいのかな?』と思っていました。だけど、自分が楽しくて気分がよくないと、周りの人にも影響しますから。全日本プロレスを見て楽しみました」
「プロレスの元気」を届けようと能登半島で戦った宮原、そして全日本プロレス。その思いは、確かに七尾市民に届いた。
「ここから、新しい何かが生まれたらいいなと思います。今回は、僕らが能登のみなさんのために何かをやるための第一歩です」
七尾市に届けた「元気」を、全日本はこれからも全国に伝えていく。
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