全日本プロレスが能登に届けた「元気」 選手会長・宮原健斗らがチャリティ大会で見せた普段どおりのファイト (2ページ目)

  • 松岡健治●取材・文・撮影 text & photo by Matsuoka Kenji

【社長が見せた男気】

 さまざまな考えが宮原の頭を駆け巡った。しかし、何度考えても能登半島に「プロレスで元気を届けたい」という思いは揺るがなかった。

「僕らは表に出る仕事ですから、少なからずさまざまな人に影響力を与えることができる。僕はいつも、自分の試合を見ている方のなかでひとりでも何かを感じてくれたらいいな、と思って戦っています。

 僕らプロレスラーは、話すことでメッセージを伝えることもできますけど、一番の使命は、リングの上で体を使って全力で表現し、お客さんに喜んでいただくこと。その使命が、今回は能登半島でチャリティ大会をすることだと思いました」

 震災以降、現地に入って歌を届けた歌手もいれば、多額の義援金を送った財界人もいる。それぞれが、それぞれの立場で能登半島へ思いを届けている。宮原はプロレスラーだ。プロレスラーだからできること。プロレスラーにしかできないこと。それがプロレスを届けることだった。

 自らの思いを仲間のレスラーに伝えると賛同を得ることができ、今年4月には福田剛紀社長に伝えた。福田社長も宮原の意向を受け入れ、入場無料での開催を決断した。

「チャリティ試合をするにも資金が必要ですから、開催するかどうかは僕だけの判断ではできません。そこで社長が開催を受け入れてくれて、しかも入場無料で実施することを決断してくれました。それを聞いた時は『大丈夫かな?』とびっくりしましたが、社長が能登の方々のことを思い、男気を見せてくれたんです」

 その時点で6月9日に岐阜市で大会を開催することは決まっており、1日あれば能登にバスで移動できる。その日は試合の予定が入っていなかったため、6月10日の開催が浮上した。5月に営業部員が現地に入って会場を探し、七尾市田鶴浜体育館で試合が実施できることに。そして5月12日、チャンピオンカーニバル優勝戦が行なわれた横浜BUNTAIでチャリティ大会の開催を発表した。

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