赤井沙希が明かす「引退ロード」の裏側 試練の連続でパンクし、10年間で初の欠場も考えた (2ページ目)
帰国後の最初の大会で、ついにファンと顔を合わせた。泣きながら売店に来たファンに「ショックだけど、ちゃんと見届ける」と言われた時、この人たちを絶対に悲しませてはいけないし、守っていかなければいけないと思った。
DDTの選手たちには、会見の数日前に選手全員の前に立ち、引退することを報告した。「残り半年ですが、DDTを盛り上げていきたいと思います」と言ったが、リアクションがまったく返ってこなかった。
「みんな、魂が抜けたようになっていて。『あれ、私の気持ち、あんまり刺さらへんかった?』と思いました。東京女子(プロレス)の子たちは、『いやー!』『辞めないでー!』という感じだったので、男女の違いを感じましたね。恋人と別れるとき、女性は『別れたくない!』とか言うけど、男性は『それはそうと、ご飯どうする?』みたいな反応だったりしますよね。まさにそんな感じでした」
【クリス・ブルックスが持つKO-D無差別級王座に挑戦】
3月21日、「赤井沙希デビュー10周年記念試合Vol.1」として高梨将弘とのシングルマッチが行なわれていたが、引退が発表されてから意味合いが変わり、「引退ロード」として記念試合が行なわれることになった。Vol.2は赤井沙希&雪妃真矢&朱崇花(現VENY)vs.彩羽匠&山下りな&中島翔子。Vol.3は男色ディーノ。
そんな中、9月23日、クリス・ブルックスが持つKO-D無差別級王座に初めて挑戦することになった。クリスとは2021年5月4日、DDT EXTREAM&アイアンマンヘビーメタル級両王座を賭けて対戦し、クリスが勝利している。赤井にとって"キャリアベストバウト"と称された試合だ。
実はあの時、前哨戦で膝の靭帯を損傷していたことを『強く、気高く、美しく 赤井沙希・自伝』(イースト・プレス)の中で告白している。ケガを公表しなかったのは、ファンに「膝はしんどいけど頑張れ」ではなく、「てめえのメンツ、自分で立ててこい」という目線で見てほしかったから。「あの試合を経験するとしないでは、私のプロレス人生はまったく違っていただろうと思う」と綴っている。
「あの状態であの試合をしたんだから大丈夫、という自信がついたんですよね。それ以降、いろんな経験を積んでからのKO-D無差別級タイトルマッチ。クリスは私を指名した以上、勝たないといけないし、私はもう後がないという強さはあったと思います。引退の記念とか思い出にするつもりはなかった。寒いじゃないですか、そんなの」
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