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井上尚弥が激戦のPFPで1位に返り咲くためには? 2階級目の4団体統一と「もうひとつの条件」 (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • 北川直樹●撮影 photo by Kitagawa Naoki

【井上なら「勝って当然」の弊害】

 昨年6月、井上はノニト・ドネア(フィリピン)とのリマッチで2回KOという圧倒的な勝利を収めた直後、短期間ながら日本人ボクサーとして初めて『リングマガジン』のPFPランキングでトップに立った。近い将来、再び"世界最高のボクサー"として認められるためには何が必要なのか。

 フルトンに勝ってWBC、WBO世界スーパーバンタム級王者となった井上は、年内に予定されている次戦でWBAスーパー、IBF同級王者のマーロン・タパレス(フィリピン)と4冠戦を行なうことが確実視されている。昨年12月、バンタム級の4冠王者になったのに続き、たった1年で2階級目の4団体統一となれば大変な快挙である。

 ただ、2階級での4団体統一は、クロフォードがスーパーライト、ウェルター級で果たしてしまった。こんなところからも、統一戦全盛となった現代トップボクサーたちのレジュメのレベルの高さが見えてくる。

 だとすれば、井上は今戦でも試合内容でもアピールしたいところだ。31歳のタパレスはバンタム級、スーパーバンタム級の2階級を制し、37勝(19KO)3敗という戦績を積み上げてきた実力者だ。4月には、それまで無敗だったムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)を際どい2-1の判定で下し、大番狂わせでスーパーバンタム級の2冠を獲得している。

 もっとも、2019年にはニューヨークで岩佐亮佑(セレス)に11回KO負けを喫した経験もあるフィリピン人は、エリートレベルの王者と見られているわけではない。井上相手に勝機があると考えている関係者はほとんどいないだろう。

 これも井上の力量に対する信頼の表れなのだが、"モンスター"がたとえフルトン戦のように豪快な勝ち方をしたとしても、それほど圧倒的な評価は得られまい。タパレスとの統一戦であっても、今の井上なら「勝って当然」と思われているのも仕方ない。

 そうなってくると、井上がトップに浮上するかどうかは、現1位のクロフォードの今後に委ねられる部分も大きいのかもしれない。

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