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井上尚弥が激戦のPFPで1位に返り咲くためには? 2階級目の4団体統一と「もうひとつの条件」 (4ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • 北川直樹●撮影 photo by Kitagawa Naoki

【クロフォードはスペンスとの再戦で苦戦する可能性も?】

 クロフォードとのメガファイトに惨敗したスペンスが再戦条項の行使を決めた、というニュースが9月初旬に流れた。敗者がリマッチ挙行を選択できる条項は両者の第1戦の契約に折り込まれており、クロフォード対スペンス2は順当ならば年末か年明けにも挙行されそうだ。

 両者の初戦はあまりにもワンサイドだっただけに、魅力の乏しいリマッチに思える。減量苦が伝えられたスペンスが希望するスーパーウェルター級での開催となれば新たな興味は生まれるが、それでもクロフォードが敗れることは想像できない。第1戦ではペイ・パー・ビュー(PPV/1本の視聴ごとに課金されるビデオサービス)購買数が60万件を突破し、第2戦もPPV中継されるだろうが、プロモーションは簡単ではないだろう。

 ただ......ワンサイドな展開が予想される再戦で、本当にクロフォードに死角はないのだろうか?フィラデルフィアに本拠を置くトレーナーで、『Boxingscene.com』でコラムを連載するスティーブン・エドワーズ氏はこう述べる。

「スペンスとの初戦でのクロフォードは"パーフェクトファイト"を見せた。あのレベルの完璧な戦いを2度続けるのは簡単ではない。過去には、フューリーもワイルダーとの第2戦での戦いは見事だったが、第3戦では同様ではなかった。信じられないかもしれないが、スペンスはクロフォードとの差を詰められると思う」

 エドワーズ氏が例に挙げたのは、タイソン・フューリー(英国)とデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)のヘビー級のライバルシリーズ。その第2戦では、フューリーが2度のダウンを奪って7回KOと圧勝。再戦条項によって第3戦が決まった際には、「挙行の必要はない。もう格付けは済んだ」と酷評された。

 ところがその第3戦では、すべてをかけて臨んだワイルダーが2度のダウンを奪う健闘をみせ、ラスベガスに集まったファンを熱狂させた。最終的には3度倒し返したフューリーが11回KOで勝利したものの、この試合は近年のヘビー級戦では"最高級の名勝負"として記憶されている。

 スペンスにはワイルダーのような一発の破壊力はないこともあって、正直、この例と似たことがクロフォード対スペンスの第2戦で起こるとは考えがたい。とはいえ、初戦でのクロフォードの仕上がりと集中力は確かに過去に見ないレベルだった。普段はスロースターターで知られるクロフォードが序盤から主導権を握り、まったく隙がなかった。再戦に同じようなモチベーションで臨み、同じだけのパーフェクトファイトを展開できる保証がないのは事実だろう。

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