ぱんちゃん璃奈に大善戦した「台湾の妖精」ワン・チンロンは何者? 双子姉妹で格闘家、スーパーマンパンチ以外の技も「次の試合で披露します」 (2ページ目)
●双子でファイター「試合は姉妹で臨む」
敗れたワンの表情が明るかった。
「ぱんちゃんのことは試合前から強敵だと思っていたし、実際に対峙して素敵なファイターだと思いました。とにかく必死になって戦ったけど、4年前にここ(後楽園ホール)で試合をした時に比べて、私は、元来のパンチ技術にキックの技術を融合させることで大きく成長できた。負けたのはもちろん悔しいけど、強くなったことを確認できたので、達成感にも満ちています」
4月21日、試合前の計量を終えたワン・チンロンこの記事に関連する写真を見る 台湾人の父親とフィリピン出身の母親を持つワンは、今年2月に大学を卒業した22歳。試合中継で解説を務めた谷川貞治氏が、そのタレント性を「人気が出ると思う。掘り出しものですよ」と高く評したが、ワンを語るうえでは、同じく格闘技に挑んできた瓜ふたつの双子姉妹、ワン・チンシンの存在も不可欠だろう。
双子の妹のワン・チンシン(右)も格闘家この記事に関連する写真を見る双子格闘家として台湾で注目を集めるワン姉妹 photo courtesy by Wang Chin Longこの記事に関連する写真を見る 双子姉妹での選手活動は以前から台湾で注目を集めており、妹のチンシンは、国家代表としての国際大会やプロボクシング戦にも出場した実績を持つ。
「当初は同じボクシング大会に出場するのが当たり前だったけど、キャリアを積むなかで、少しずつ姉妹で異なる活動も出てきた。そのなかで私はキックも取り入れるようになった。今は同じ試合会場にいない場合もあるけれど、それでも生中継を観たり、お互いの試合にふたりで臨むのが姉妹の決めごとです」
奇襲のスーパーマンパンチは、日頃から徹底練習してきた攻撃で「今回は無意識に放っていた」と振り返るワン。試合前から「『KNOCK OUT』(今回のイベント)の看板選手になりたい」と語っていて、KNOCK OUT運営側はワンの再招聘を検討している。
今回のぱんちゃん戦では、スレンダーな体型とのギャップも感じさせる強固な精神力を示した。ワンは「次の試合では、さらに別の能力も披露します。そのためにも、すぐにトレーニングを再開したい」と誓った。自身、ファイターとして細すぎるという課題を感じているとのことだ。
一方のぱんちゃんは、今年3月に臨んだエキシビション戦の直後に不起訴が確定していた。今回の試合後、ワンと健闘をたたえ合ったほか、SNSでは画像なしで「皆様ありがとうございました。もっと強くなれるように努力致します」と投稿した。
タレント性あふれる両ファイターに今後も注目だ。
4月21日、東京都内にて。「日本の神聖な建築物や国民性が好き」と語るこの記事に関連する写真を見る【プロフィール】
王 靖蓉 ワン・チンロン
格闘家。「TKBA」所属。身長167cm。2000年、台湾・台中市生まれ。中学時代に双子の妹チンシンとボクシングを始める。趣味はダンス、登山、TikTok撮影。好きな食べ物はケーキ、ミルクティー、バーベキュー、しゃぶしゃぶ。
著者プロフィール
善理俊哉 (せり・しゅんや)
マルチメディア記者。埼玉県出身。中央大学理工学部在学中から『格闘技通信』、『ボクシングマガジン』といったベースボールマガジン社の格闘技専門誌を中心に試合レポートや連載を始める。過去の連載にはゴング格闘技での『村田諒太~黄金の問題児~』(2012年)などがあり、井上尚弥と父・真吾氏による自叙伝では編集を担当した。並行していたテレビ業界での活動経験を生かし、世界各地の映像素材による企画・提案も行なっている。一例として、フジテレビ戦後70周年特番でのインパール作戦のルート「白骨街道」潜入など。メインの取材は五輪ボクシング。
フォトギャラリーを見る
2 / 2