うつ病から復帰した高橋奈七永が受ける誹謗中傷。それでも「今の女子プロレスはヌルい」と声を上げ続ける理由 (4ページ目)
12月末、SEAdLINNNGを退団。2022年4月、GLEATにて復帰した。7月にはスターダム大田区総合体育館大会にて、ワールド・オブ・スターダム王者の朱里に挑戦表明。8月、スターダム名古屋大会で朱里と死闘を繰り広げるも、敗れた。
古巣スターダムのリングに上がることについて、ファンから誹謗中傷を受けた。しかし、"女子プロレス界の人間国宝"の心が折れることはなく、10月から始まったリーグ戦「ゴッデス・オブ・スターダムタッグリーグ」に優宇とのタッグで出場した。
「リーグ戦に出るには、覚悟を持たなければいけない。もっと踏み込まなければいけないから。関わらなければ、勝つこともなければ負けることもない。傷つくこともない。でも私は挑戦したかったんですよ」
高橋と優宇のタッグは「最低でも優勝」という合言葉のとおり、優勝を果たした。
「今のスターダムというか、女子プロレスはヌルいです。私は全女の厳しい時代に生きてきたから、もはや違うものだと思ってる。でも、私が生きてプロレスをやっている時代に、それを違うものだと認めちゃいけないとも思っているから、声を上げています」
【一番大切なのは、思いやり】
やるなら厳しいところでやりたいと、全日本女子プロレスからスタートしたキャリア。これまでは常に厳しいほう、しんどいほうを選ぶ人生だった。しかし今、デビュー26年目の高橋が考えているのは、「楽しく生きて、自分を肯定したい」――。そう思えるようになってよかったと、心から思っている。
「ある時までは、全女の名前を出すのも嫌だったんですよ。そこの歴史がないとプロレスを語れない人になりたくなかった。でも、今はもう、全女もパッション・レッドも、SEAdLINNNGもそうだし、『すべて自分が、その時々で一生懸命やってきたことだ』と思える。それらを自分で肯定するためにも、全部の歴史を総動員して闘っていきたい」
プロレスをする上で、一番大切にしていることはなにか。
「思いやりです。お客さんの気持ちになることだったり、自分がいろんなところに立ってみることだったり。対戦相手に対しても、思いやりを持って、ぶっ倒す。ぶっ倒すことも、思いやり。思いやりだと思ってます、いつも」
【プロフィール】
■高橋奈七永(たかはし・ななえ)
1978年、埼玉県川口市生まれ。プロレスラーを志し、高校を中退。1年間、アニマル浜口ジムに通う。1996年7月14日、全日本女子プロレス後楽園ホール大会にて、対中西百重戦でデビュー。全女解散後、プロレスリングSUNを旗揚げ。2008年4月にフリーに転向し、夏樹☆たいよう、華名(現WWEのASUKA)とともにトリオユニット「パッション・レッド」を結成。2010年、プロレス大賞「女子プロレス大賞」を受賞。2011年1月、スターダム旗揚げに参加。2015年5月に退団し、6月にSEAdLINNNGを旗揚げする。2021年12月、SEAdLINNNG退団を発表。うつ病を患っていることを告白する。2022年4月、GLEATにて復帰し、8月から古巣スターダムのリングに上がる。10月、優宇とのタッグで「ゴッデス・オブ・スターダムタッグリーグに出場し、優勝を果たした。Twitter:@nanaracka
【著者プロフィール】
尾崎ムギ子(おざき・むぎこ)
1982年4月11日、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業後、リクルートメディアコミュニケーションズに入社。求人広告制作に携わり、2008年にフリーライターとなる。「web Sportiva」「集英社オンライン」などでプロレスの記事を中心に執筆。著書に『最強レスラー数珠つなぎ』『女の答えはリングにある』(イースト・プレス)がある。Twitter:@ozaki_mugiko
■大会情報
高橋奈七永&優宇が、中野たむ&なつぽいが持つゴッデス・オブ・スターダム王座に挑戦!
スターダム両国国技館大会
12月29日(木)17:00試合開始
【画像】「女子プロレス界の人間国宝」高橋奈七永フォトギャラリー
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