うつ病から復帰した高橋奈七永が受ける誹謗中傷。それでも「今の女子プロレスはヌルい」と声を上げ続ける理由 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

 しかし、2015年5月、スターダムを突如退団。きっかけとなったのは、世IV虎(現世志琥)vs安川惡斗戦。激しい殴り合いの末、安川がケガを負って物議を醸した試合だ。世IV虎に対する世間のバッシングは酷く、世IV虎は引退に追い込まれた。

「自分も含め、世IV虎を守ってあげられなかった。『リングで起きたことなのに、なんでこんなことになるの? こんなのプロレスじゃないよ!』という思いがありましたね。嫌になってしまった」

 6月、高橋は夏樹とともに新団体「SEAdLINNNG」を旗揚げ。頑張った人が正当に評価される場所を作りたかったという。

「結局は全女に戻っちゃうんですけど、やっぱり勝つか負けるかだし、強い人が勝つ。シンプルなんですよね。それがプロレス」

 社長として団体を運営しながら、看板レスラーとしても活躍。さらには、強さを求めてラウェイにも挑戦。2016年12月、ミャンマー・ヤンゴンで開かれた興行に出場し、現地の女子61-64キロ級王者であるシェー・シン・ミンにKO勝利した。しかしこの頃から、徐々に徐々に、精神が蝕まれていく。

【うつ病との闘い】

「プロレスのことを考えたくない」――いつしかそう感じるようになっていた。プロレスは大好きだが、頭が動かない。このまま考えられなくなるかもしれないという不安から、夜は眠れない。涙が止まらない。妥協できない性格で、社長業もプロレスもラウェイの練習も完璧にやりたい。しかし、どんどん心身のバランスが崩れていく。自分でもどうすることもできなかった。

自身のプロレス人生を振り返った高橋 photo by 林ユバ自身のプロレス人生を振り返った高橋 photo by 林ユバこの記事に関連する写真を見る 3回目のラウェイの対戦相手は、元ボクサー。歯がボロボロになるまで殴られたが、ギリギリ引き分けに終わった。その選手と「もう一度やらないか」と言われたが、このままでは勝てない......。高橋の心は限界だった。心療内科に行くと、診断結果はうつ病。それでも、公表せずにプロレスを続けた。そのことが、高橋をさらに追い詰めていった。

「理解してくれる人もいたけど、全然わかってくれない人もいて、すごく傷つきました。ちょっと思いやりを持てば変わるのに......。上辺だけで判断しないでほしい。人の中身なんて絶対わからないから。想像力や思いやりを持つことが大切だと思う」

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