ケンコバの頭が大混乱。ザ・コブラの異様すぎる凱旋マッチに「今、俺は何を見ているんだ?」 (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by 木村盛綱/アフロ

――確かに、奇妙なマスクとタイツでした。

「一方のコブラも、明らかに肌が日に焼けすぎていて、その上にホストのような白のジャケットを着ていた。それで神輿に担がれて花道に登場するんですけど、担いでいる人たちが、ミル・マスカラスといった歴代の名メキシカンレスラーのマスクをかぶっていたんです。今思えば、若手レスラーが覆面をかぶっていたんだろうと思えるんですが、当時の俺は『本物か?偽物か?』と混乱を極めていきます。

 そんな中で、リングに上がったバンピートが覆面を脱ぎ捨てて、実況の古舘伊知郎さんが『デイビーボーイ・スミスだ!』と叫んだんです。デイビーボーイ・スミスはその時が初来日だったんで、俺は誰だかわからなかった。ここで完全に脳がバグりました」

――確かに、デイビーボーイ・スミスはのちにトップレスラーとして大人気になりましたが、この時は日本のファンには知られていませんでした。リング上で起きていることが理解できなくても仕方ないですね。

「ただ、混乱はさらに続くんですよ。観客が、マスクを脱いだスミスをダイナマイト・キッドと間違えて、『キッド!キッド!』とコールし始めたんです。そこで俺は、『古舘さんはスミスって言っているのに、キッドってなんなんだ?』と。そこからパラレルワールドに迷い込むことになりました」

――会場の観客には「デイビーボーイ・スミス」とはアナウンスされていませんから、体型も似ているダイナマイト・キッドと間違えるのは無理もないことでした。

「そうした中でスミスがいきなり、ホストみたいなジャケットを着たコブラをリフトアップスラムして、乱戦に突入しました。『このまま試合へ突入か』とゴングを待ったんですが......そのタイミングで、コミッショナー代理だったテレビ朝日の永里高平スポーツ局次長と、野末陳平さんがリングに上がってきた。そして永里さんが、『この試合はNWAの認可する選手権試合であることを宣言する』と、NWAジュニアヘビー級の認定証を読み出したんです。

 それを、直前に乱闘していたコブラとスミスのふたりがおとなしく聴いているんですよ。乱闘後にセレモニーが行なわれて、バンピートの正体は『デイビーボーイ・スミス』なのに認定証では『ザ・バンピートは......』と読まれて......。ますます異世界の深みへとハマっていきました」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る