「美しすぎるボクサー」と話題を呼んだ伊藤沙月。五輪を目指していた当時と自衛隊退官後の今を語る (2ページ目)

  • 石塚 隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

高い能力と負けん気の強さで実力を磨いていった高い能力と負けん気の強さで実力を磨いていったこの記事に関連する写真を見る 人生何が起こるかわからない。ハードワークを強いられるボクシングではあるが、グローブを着け、リングに立ち、1対1の勝負に挑むーー。

 伊藤は、このプリミティヴな競技性に魅了されていった。

「男子と混じってやっていたので、力で勝る人間にどう技術で勝つことができるのかを考えるのが楽しかったんです。あとは単に殴り合っているように見えて、見えない部分での駆け引きがあって、そこも魅力かなって。恐怖心ですか? あまり感じなかったです。それよりもボクシングは準備が9割のスポーツで、減量や調整とか他の競技にはないぐらい繊細にやらなければいけないこともあって、いわば自分との戦いでもあるんです」

 ストイックに自分に向き合うこと。伊藤にはそれが性に合っていた。

 だが一方で、前述したように周囲はボクシングスキルに加え、伊藤のルックスに強い関心を向けることも多かった。この点についてはどのように考えていたのだろうか。

「いや、そこは自分では何とも言えないところですね(苦笑)。ただ注目されるということはプレッシャーがかかることですし、先ほども言ったように『自分の敵は自分だ』と思っていたのでプラスに働いたと思います。あとは大学へ進学する理由にもなったのですが、私としては女子ボクシングを広めたいといった思いもあったので、どんなカタチであれ注目してもらえればいいなと考えていました」

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