全日の脇役からスターへ。ジェイク・リーの
葛藤と人生を変えた出会い (3ページ目)
「『やってやる、この野郎!』と思っていましたね。復帰して、Sweeperというユニットを組んで、岩本(煌史)選手とアジアタッグも獲って、そういう流れのなかで自然とそう思うようになりました。それまでは自分に言い聞かせていた部分が大きかったんですけど、言い聞かせ続けた結果ですかね。自分に催眠術をかけたんじゃないかっていう。『催眠術、かかるの遅っ!』って思いますけど(笑)」
そして9月、念願の王道トーナメント優勝を果たす。エース・宮原との激闘が印象に残っているが、意外にも「諏訪魔さんに勝てたことが一番大きかった」という。諏訪魔はジェイクをプロレスの道に導いた人物。一度、プロレスを引退し、復帰を決意したときに最初に電話をかけたのも諏訪魔だった。そんな彼に勝ったことで、ここからが始まりだという気持ちになったという。
「自分がプロレスをやめて、ポロポロ捨てていったものをすくえた感じっていうのかな。ちょっと言葉じゃ表現できないですけど、マイナスだった自分が、やっとこれでゼロになれたという感じがありました。それからKAI、石川(修司)、宮原にポンポンポンと勝利を積み重ねて、その過程が自分の気持ちを確実なものにしてくれた」
いまや、宮原が「スター」と認める存在だ。しかし、自分がスターだという自覚はまったくない。
「プラモデルで言うと、足です。足をつくっている時って、本当に最初なんです。完成形を見ながら、ああ、いいなあって思いながらつくるわけですよ。けど、それくらい僕は自分に伸びしろがあると思っています。どんな形であれ、完成はされると思うんです。その時に初めて、自分はどういう選手だったのかというのを見てもいいのかなと」
ジェイク・リーは変わったなと、あらためて思った。ひと言で言うと、余裕が生まれた。一切の焦りを感じさせず、冷静に、そして笑顔で話す彼を見て、この質問をぶつけずにはいられなかった。「人はどうしたら変われると思いますか?」──。
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