全日の脇役からスターへ。ジェイク・リーの葛藤と人生を変えた出会い
人間はだれしも、変わりたいと願う生き物である。しかし多くの人が、その術(すべ)を知らない。変わりたい、もっと違う自分になりたい──そう切望しながら、なんら変わることなく日々が過ぎていく。全日本プロレスのジェイク・リーもそうだった。
2016年10月にインタビューした時、悩み、もがいているだろうことがひと目でわかった。「自分のためにという感情がどんどん芽生えてきた」「隣にいる三冠チャンピオンを超えてやる」といった前向きな言葉を口にするも、その目はどこかうつろで、諦めのようなものを含んでいた。
いまや全日本プロレスのリングに欠くことのできない存在となったジェイク・リー それが、どうだろう。昨年9月に開催された王道トーナメントで、エース・宮原健斗を破り、見事優勝。続く三冠ヘビー級選手権試合では、惜しくも宮原に苦杯を喫したものの、宮原は試合後のマイクで「ジェイク・リーはスターだ。全日本プロレスにはスターがふたりいる」とジェイクの快進撃をたたえた。
技の数も増えた。表現力も増した。そしてなにより、全身から放つミステリアスなオーラに、誰もが目を奪われる。この3年間で、ジェイク・リーというレスラーはいかにして葛藤を乗り越え、変化したのだろうか。
ジェイク・リーは3年前のインタビューを振り返り、「すごい焦った口調でしたよね」と笑う。
「自分はこうで、ああで、とプロモーションしなければいけないと思い込んでいた気がします。自信は芽生え始めてきていたとは思うんですけど、自分に言い聞かせていた部分がありました。目の前のことを必死でやらないと前に進めないというのは、当時の自分もわかっていたつもりです。そういう時期だったのかなと思います」
2017年7月、膝のケガで長期欠場することになる。手術の直後、真っ先に電話をかけたのが武道家の倉本成春だった。ジェイクは倉本のことを「僕の人生を変えた人」と話す。出会いは大学3年生の時。重量挙げの世界大会にも出場していたジェイクだが、力比べをした時に倉本に指一本で負けた。その時の衝撃が忘れられず、ケガを機に彼の元を訪れたのだ。欠場中、倉本から武術の心得を学び、ジェイクのなかで強さの定義が変わったという。
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