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日本レスリングに陰り。王国復活へ
強化が必要も現体制は問題山積だ (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 リオ五輪の前年は、当時大学生だった太田や樋口が世界選手権後の全日本選手権で初優勝を飾り、その勢いのままアジア予選を突破した。怖いもの知らずの若さと、他国から研究されていないアドバンテージを最大限に駆使して五輪本番でも輝いたように、新戦力の台頭が望まれる。

 そして、問題は女子スタイルだ。

 オリンピック4連覇の伊調馨(ALSOK)との約1年に及ぶ死闘を制した川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)が57キロ級に出場。「飛び込むスピードはいまや世界一」と評されるタックルを武器に、世界選手権3連覇を成し遂げて五輪内定を勝ち取った。だが、日本女子チーム全体で見ると、金メダルはその1個に終わった。

 笹山秀雄・女子強化委員長は、「伝統は守れたと思います。金メダルはひとつでしたが、そこまで惨敗だとは思っていない」とコメント。たしかにリオ五輪の前年と同じく5階級で出場枠を獲得したが、女子レスリング王国に暗雲は立ち込めていないか。「来年の東京はリオデジャネイロで獲得した金メダル4個に遠く及ばない」との声も上がっている。

 62キロ級の川井友香子(至学館大)は銅メダルを獲得し、姉・梨紗子との姉妹オリンピック出場の夢を叶えた。53キロ級の向田真優(至学館大)と76キロ級の皆川博恵(クリナップ)は銀メダルを獲得し、女子の五輪内定は計4選手。ただ、川井梨紗子をのぞく3選手と各階級チャンピオンとの実力には開きがあり、残り1年でその差を縮めるのはかなり厳しいのではないだろうか。

 また、68キロ級の土性沙羅(東新住建)も肩を手術した影響があるとはいえ、5位入賞でかろうじて出場枠は掴んだものの、リオ五輪を制した4年前の強さは見られなかった。身長差20cm以上の外国人選手にも臆さず決めるタックルを東京でも見せてほしいが、6月に行なわれた全日本選抜選手権での内容を見るかぎり、国内でも苦戦は必至だろう。

 女子で唯一、オリンピック出場枠を逃したのは50キロ級。準々決勝で敗退した入江ゆき(自衛隊体育学校)は、2年続けてプレーオフを争ったと須崎優衣(早稲田大)と再び五輪の切符をかけて争うことになる。

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