内山高志、リマッチを語る。
「転んだって、何度でも立ち上がればいい」 (3ページ目)
最後は仲違いする形で、内山が家を出ている。もちろん、父は息子が憎かったのではない。その逆。かたくなだったのは、ガンに侵された自身の余命がいくばくもないことを知っていたから。もしも愛息の夢が叶わなかったとき、その人生を長くは背負ってあげられないことを知っていたから――。
以前、「なぜ、ボクシングに対し、そこまでストイックなのか?」と聞いたことがある。内山は「いい風に話したいわけじゃないんですが......」と前置きしてから、言葉を慎重に選び語り出した。
「僕は、父にものすごく愛情を注がれ育ちました。小さいときは、毎年のようにキャンプや海に連れて行ってもらって。それなのに、最期は......。親父にあんなにいろいろしてもらったのに、まったくなんも返してない。してあげられることは、もう何ひとつない。親父が亡くなり、これでもし、テキトーにボクシングをやっちゃったら、それこそ『こんなクソ野郎、いねーよな』って思ったんですよね。もちろん、成功しようと思っても成功できないこともある。でも、妥協しないことならできる。だから、とにかくボクシングだけは真剣にやろうって決めたんです」
取り返しがつくならば、それは絶望などではない。内山は言った。
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