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内山高志、リマッチを語る。
「転んだって、何度でも立ち上がればいい」 (2ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 利根川幸秀●撮影 photo by Tonegawa Yukihide

 だが、3日目の朝、ボクサーの難儀な性(さが)か、心より先に身体がうずいた。

「試合でほとんど動いてない。2ラウンドしかやっていないので、疲労もダメージも残っていない。身体だけは元気で、なぜか走りたくなったんですよね」

 街を走れば、予想どおり何人かに声をかけられた。しかし、優しい言葉の数々は予想に反し、素直に心に染みわたった。それどころか、噴き出す汗とともに、からまった思考が整理されていく。

「死んだわけじゃねーしな」

 ジョグを終え自宅に戻るころには、そんな境地にたどり着いていた。

「不謹慎なたとえ話ですが、もし僕が事故や病気で2度とボクシングができない身体になったのなら、もし震災や何かでボクシングどころではなくなったら......。それこそ絶望だと思ったんですよね。間違っても、今、僕の置かれた状況は、絶望や不幸なんかじゃない」

 きっと内山高志は、本当の絶望を知っている。

 2005年11月、プロ第3戦のわずか2週間前、内山の父はこの世を去った。

 内山がプロになることを伝えると、激しい親子喧嘩になった。安定した職に就くことを望んだ父。夢を追うことを決めた息子。お互い一歩も引かず、落としどころは見出せなかった。

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