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【SVリーグ】今季で引退のドミトリー・ムセルスキーが8年前に来日したワケ「日本のバレーボールの成長の理由が知りたかった」 (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Yoichi Igawa

【「選手としても、人間としても偉大な男」】

 今年初頭、その現在37歳の世界的なスーパースターが今シーズンかぎりで現役を退くことを表明した。年齢的には、なにも不思議はない決断かもしれない。

 ただしサントリーの試合を見れば、ムセルスキーは今でも特大の存在感を放っている。それは数字にも見て取れる。SVリーグ第16節終了時点で、総得点は2位(602)、アタック決定率は1位(53.6)、サーブ効果率は4位(13.2)、1セットあたりのブロック決定本数は2位(0.67)と、リーグが公表しているスタッツのほぼすべてで上位に入っているのだ。

 つまり30代後半のベテランながら、まだまだトップレベルで他を圧倒するようなパフォーマンスを披露しているわけだ。サントリーのオリビエ・キャット監督は2月7日のジェイテクトSTING愛知戦後の記者会見で、「来季は彼の不在をいたく惜しむことになる。選手としても、人間としても偉大な男だから」と率直に話していた。「とはいえ、彼は熟考の末に難しい決断をしたのだと思う」と付け加えて。

 筆者はもともと、主にサッカーについて執筆してきた書き手で、この外国籍選手とのインタビューシリーズも、Jリーグの選手たちを取材対象として始めたものだった。ただ昨年の暮れ頃からバレーボールの現場を取材する機会に恵まれるようになり、初めて訪れた試合がサントリー対ペルージャの一戦だった。その時、ひときわ目を引いたのがムセルスキーだった。頭ひとつ抜けた巨躯をしなやかに動かす圧巻のプレーはもちろん、優しそうな眼差しが印象的だった。

 そして彼が試合後に英語を話している姿を見て、ぜひこのシリーズで直接話を聞いてみたいと思った。そんな矢先に表明された現役引退。「難しい決断」の理由や日本での日々の記憶など、多くの訊きたいことを携えて大阪へ向かった。

 チームの練習が始まる前のアリーナは静寂が支配する場所だ。そこにムセルスキーは穏やかな表情を浮かべながら静かに現れ、こちらが差し出した右手を、とても大きな手で包み込んだ。

「英語は自分にとって第二言語なので、先にいただいた質問への回答をメモしたものを見ながら、答えてもいいだろうか」とムセルスキーはインタビューを始める前に言った。

 きっと何事にも誠意をもって対応する律儀な人なのだろう。このシリーズだけでも、およそ20人にインタビューしてきたが、最初にそんな断りを入れてきた選手は初めてだ。多くの関係者が、何よりも讃えるムセルスキーの人間性が垣間見えた。

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