宇野昌磨がアイスダンス挑戦を決断した理由は「本田真凜は天才。そのすごさをみんなに伝えたくて」
5月22日、都内。会見場に現れた宇野昌磨(28歳)はやや表情が硬く、どこか緊張しているようだった。あるいは、熱意や真剣さを伝えるためだったか。その日、彼は競技復帰、それも世界王者にもなったシングルではなく、アイスダンスでの挑戦を発表していた。会見はYouTubeでも生配信されていた。
隣には、カップルを結成した本田真凜(24歳)が座っていた。
そして壇上のふたりは声をそろえて言った。
「(目標は)2030年のオリンピックに出場することです!」
壮大な目標を発表することで、決心を固めていた―――。
五輪出場という目標を宣言した宇野昌磨と本田真凜 photo by Naozumi Tatematsuこの記事に関連する写真を見る
「オリンピックを目指してアイスダンスをやろう!」
2024年10月、シングルを引退していた宇野は、同年にシングルで引退した本田をそう誘ったという。宇野は当時の心中を明かしているが、それは半ばラブレターのようでもあった。
「見る人が見ればわかると思うんですが、僕はどれだけ(本田)真凜がすごいかを知っています。"何をさせてもすごい"表現力があって、すごく天才で。それを(アイスダンスをやることで)みんなに伝えたくて。真凜のよさを知ってもらいたい、というのが誘う決断に至った理由というか。そして1年半練習してきましたが、ふたりだからこそ難しいことはあっても楽しくて、辛い日々も楽しくなって。今は強い思いで目標を叶えたいと思います」
宇野は徹頭徹尾、パートナーを褒めちぎった。本心からの言葉だから、のろけでも愛嬌が伝わる。会見はすっかり彼のペースになった。他者に対して好意と尊重をぶつけられる大らかさだ。
「ぶっちゃけると、真凜のスケートのすばらしさは僕(がパートナー)でなくても伝わると思うんですよ。トップレベルの他のアイスダンサーと組んでも、数年ですばらしいアイスダンサーになるはず。でも、他の男の人と...それはな、と(笑)。隣は自分がいいなって」
壇上で、自らそう言って身をよじる姿に、憎めなさがさく裂していた。
そう言えば、アイスショー『Ice Brave』のインタビューで、宇野は本田と組んだアイスダンスについて質問したとき、膝を打つような反応を示していたことがあった。
――フラメンコの衣装をまとった本田真凜さんが、かつて宇野さんが滑ったスパニッシュギター曲の『天国への階段』を艶っぽく滑る姿は印象的でした。フィギュアスケートは本来、こうした美しさ、華やかさ、何より物語を伝えるのが本質なんじゃないかと思わせるほど......。
「マジでわかります! (本田)真凜は僕にないものを持っているというか、流れている音楽を自分なりに表現することができるんですよ。真凜の演技は、曲本来の物語を自分が登場人物になって演技しているよう。時には、それほどストーリーがない曲であっても、そのストーリーを垣間見せるというか。そこは自分に足りなくて、会得しないといけないものかなって思います」
手放しの絶賛だった。彼の中で、本田のスケーティングにはインスパイアされるものがあるのだろう。それをアイスダンスで作っていくため、「五輪を目指す」という道筋になった。
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。













