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宇野昌磨がアイスダンス挑戦を決断した理由は「本田真凜は天才。そのすごさをみんなに伝えたくて」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 立松尚積●撮影 photo by Naozumi Tatematsu

 宇野自身は引退するまでアイスダンスに対し、憧れや興味はなかったという。シングルでの演技に全精力を注ぎ込んできたからだ。しかし今回はひとりではなく、本田とふたりで何かを作り上げたくなったという。それがアイスダンス競技挑戦という答えになった。

 いきなり競技者に復帰し、ミラノ五輪を目指すほど甘くはない。それだけに入念に練習を重ねながら、アイスショー『Ice Brave』でもアイスダンスのプログラムを滑った。それが世間の高い評価を受けた。いきなり息の合ったツイズルを見せると、関係者からは「アイスダンサーで現役復帰しても面白い」という意見も聞こえていた。

 その歓声や反応は、ふたりに力を与えたはずだ。

 宇野は勝ち負け以上に、「楽しさ」を追い求めていくという。ふたりで何かを作り上げる過程を大事にし、それをファンに楽しんでもらえるか。競技者だが、表現者の域の発想だろうか。もっとも、かしこまった種類のものではなく「アイスダンスもふたりが小さい頃に始めたスケートの延長線上にある」という説明が腑に落ちる。ふたりは今も、無垢に滑ることを楽しんでいるのだ。 

「僕自身、自分のシングル時代のスケートに納得していなくて......ジャンプは頑張ったし、世界トップレベルで、自分が自分じゃなくても、尊敬できるくらいですが......」 

宇野はそう言って、朗らかな声でこう続けていた。

「ジャンプのクオリティというか、自分の技術力でよくあそこまでやれたなって思いますが、ジャンプ以外のところはまったく納得していなくて。自分が"もっとできるだろ"って思っているからこそ、納得していない。そのできなかった部分がアイスダンスに通じているからこそ挑戦しているんでしょうね。"まだまだできることがある"と思えるのは、すごくいいことだと思っています」

このインタビュー当時は競技復帰を秘密にしていたが、思いがこぼれ出ていた。天然さというか、飾らない彼らしい。

20264月には、ふたりはアイスダンスの聖地と言えるカナダ、モントリオールで2週間を過ごしている。世界のトップ10のほとんどがいるリンクに、ほとんど朝から晩まで立ち続けた。

「練習時間が長くて、筋肉痛になって、時差で寝られなかったんですが......ひとりじゃないから、すごく楽しくて。難しさはある一方、やりがい持ってできるので、うれしいというか。ふたりだと日々の練習も、こんなに捉え方が違うんだなって」

 そう語る宇野の表情は、爛漫な明るさに満ちていた。

 新シーズン、ふたりは全日本選手権につながる地方大会から参戦するという。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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