【女子バレー】デンソーの大﨑琴未は全治5カ月の大手術で「素人になっている」 支えとなったのは同期・石川真佑が活躍する姿 (3ページ目)
【石川真佑の活躍に「力をもらえます」】
大﨑は自責で言うが、ネガティブな感情は澱(でん)のようにたまるだろう。心が沈むような重さだ。
「SVリーグ初年度は、外から見ていて『みんな、どんどんうまくなるな』と思いました。コートでプレーしている人が輝いて見えて、どんどん先へ行ってしまう。東レでは自分もコートに立っていたし、『負けたくない』って思っていた。自分もコートに立ちたい思いはありますが......」
彼女をつなぎとめているのは"経験"だ。
「(U18アジア選手権を制覇した時に)正直、『なんでこのメンバーに選ばれたんだろう』って思っていましたが、がむしゃらに、必死についていきました。中学までは全国優勝とかはなく、楽しくやっていただけでギャップはありました。ただ、成徳でやるようになってプライドも出てきて、東レに入り、真佑などすごい選手たちとプレーを続けてきました」
大﨑は石川と高校、実業団で合計7年間一緒にプレーしている。今も連絡を取り合っているが、とりとめもない話が多いという。
「真佑の本当のすごさは、東レから彼女がいなくなってから思い知りました。たとえば、ミドルは一緒にブロックで飛ぶ選手によって"飛びやすさ"があるんですが、真佑は成徳で一緒にやっていたこともあるけど飛びやすかった。彼女は一枚でも止めるし、タッチを取ってくれる。難しいボールも率先してカバーしてくれていました。『どれだけ助けられていたんだ』と思いましたよ」
そして大﨑は、左手首に残る手術痕をさすりながら言った。
「テレビで見ると"別世界の人"って感覚もあるのですが......真佑があれだけ活躍する姿を見ると、自分も力をもらえます。言葉だけが、励ましの手段じゃない。たぶん、真佑と同期の選手はみんなそんな感じだと思いますよ」
彼女の同期は石川だけではない。多くの戦友たちがいた。成徳、東レで同期の野呂加南子(2023年に現役引退)とは、交換ノートでの交流を今も続ける。
「東レ時代、加南子、坂本侑、(水杉)玲奈(3人とも2023年に現役引退)でノートを回すようになって、加南子とは今も続いています。小学生みたいな内容で、今日のよかったことや悪いこと、なんでもランキングとか(笑)。バレーと関係ないことを書けるから精神安定剤というか、リフレッシュできます。加南子は青森にいるので、1、2カ月に一度の割合で、ノートを郵送します。一緒にグミやチョコ、プレゼントなどを入れて」
大﨑は無邪気に笑った。口元にやった指には、賑やかなカラーのネイルが塗られていた。バレー人生を明るくするための鎧をまとい、彼女は再びコートに立つ。
(後編:大﨑琴未は音駒高校の指揮官の言葉でリハビリを乗り越えた「一番無意味なのは『ただ』やること」>>)
【プロフィール】
大﨑琴未(おおさき・ことみ)
所属:デンソーエアリービーズ
2000年8月23日、島根県出身。180cm・ミドルブロッカー。小学5年生からバレーを始める。下北沢成徳高(東京)では、3年時にインターハイと国体の二冠を達成し、2019年に東レアローズに入団。2022-23シーズンは副キャプテンを務め、今年の6月にデンソーエアリービーズに入団した。日本代表としては、2019年に日本代表のB代表としてアジア選手権に出場して優勝に貢献した。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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