【男子バレー】宮浦健人が黙々と研ぎ続ける武器 サーブは「まだまだスピードも足りていない」 (3ページ目)
「同じポジションは比較されますし、競争していかないと、とは思っています。でも、代表は試合が始まったら、チームが勝つか負けるかしかない。僕はどういう立場でも、勝つためだけに最善を尽くします。
同じポジションで出られる枠はひとつですが、パリ五輪は西田選手が本当によかったし、僕は力不足を感じました。西田選手は自分よりも身長が低くて、世界のオポジットのなかではかなり低いほうですが、(そんな西田の活躍する姿は)刺激になるし、学べることがたくさんあります。ただ、競争もしていかないといけないですね。
今は世界のトップ選手がSVリーグに集まり、特にオポジットというポジションは外国人が占めている。そのなかでチームの優勝を目指し、個人としてもポジションで一番になれたらと思っています。もっともっと強くなりたいです」
彼は最強の自分と向き合い続ける。己に厳しいからこそ、自らを鍛え上げられる。彼は言葉よりも、人生そのものが詩文になるタイプだ。
ブルガリアとの1試合目は、サービスエースを5本を決めている。レシーブを潰すような威力があった。唸りを上げたボールが、相手の手元で急激に変化するだけに制御できない。そのサーブには、練り上げた太刀筋のようなものを感じる。
「今日は結果的にエースを数本取ることができました。でも、まだまだスピードも足りていないし、体が乗り切れていない、球に勢いがないというか。もっとサーブのトスに集中して、腕を振っていきたいです」
彼はブルガリア戦を振り返ったが、そうして"最強の宮浦"を作り上げていくのだろう。
「自分は"攻める"っていう気持ちで、攻めます」
その愚直な信条が、宮浦をたどり着くべき場所に導くはずだ。
9月6、7日に、日本はパリオリンピック準々決勝で敗れたイタリアとの強化試合を行なったあと、世界バレーに向かう。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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