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【男子バレー】髙橋藍が24歳のバースデーに誓った進化 キレを出すための体作りで「大好きなラーメンが食べられない」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「"たら、れば"は考えたくない】

 彼は勝負そのものを楽しみ、強くなってきた。そのプロセスでは、必ず勝利の算段を整えている。だからこそ逆境にもアジャストし、乗り越えられる。興味深いのは、その鍛錬が"絶対に負けられない"という重圧に転じないこと。ひりついた瞬間にこそ、価値を感じている点だ。

 昨シーズンのSVリーグの期間中、チャンピオンシップの"負けたら終わり"の勝負に向け、聞いたことがあった。

――ヒリヒリした感じはプレッシャーにならないですか?

「ならないですね(笑)。ファイナルこそ、楽しまないといけない。そのために長いシーズンをやっているんで、そこで勝てないなら意味がない」

 彼は軽やかな口調で言った。事実、髙橋はチームをSVリーグ初代王者へと導いている。まさに"勝負の怪物"だが、負けを引きずらない、からりとした性格こそ、彼の強さだ。

――負けた試合は振り返らない?

 そう質問を投げた時の答えは明快だった。

「いや、負けた試合も勝った試合もあまり見ないですね(笑)。『このプレーをこうしたらよかった』とか、『こういう決め方できたんだ』って考えることはプラスもあるかもしれないけど......。"たら、れば"は考えたくないです。自分は常に先を見ておきたいので」

 彼は野心的だが、ネガティブな執着心がない。いつもフラットで、明るく、だから何者にもなれる。バレーボールを広く普及させるためには、道化にもなれる。端的に言えば、前向きなのだ。

 9月3日も、日本はブルガリアに3-2で制して連勝している。スコア的には1戦目と比べると苦戦だったが、たくさん選手を入れ替えながらの調整のため、悲観する要素はない。

 次の壮行試合は、9月6、7日に行なわれる強豪・イタリア戦。そこで仕上げ、9月12日にフィリピンのマニラで開幕するバレーボール世界選手権に挑む。

「強くなる」
 
 それが髙橋の24歳の誓いだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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