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【SVリーグ男子】髙橋藍「決勝はウルフドッグスの分まで戦う責任」 準決勝、騒然の結末 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

「(22-25で落とした1セット目は)チームとして、"ここで行きたい"というところでエネルギーを出せていませんでした。ベンチから見ながら、相手の速いサーブに押されているな、と。2セット目、"何かしたい"と思っていたところで監督から声がかかり、出番が来ました」

 そう語った佐藤は殊勲者だった。セッターの大宅真樹も「今日に関しては佐藤選手が流れを変えてくれました」と語っていたように、前日のシリフカに続いて、レフティがチームを救った。どんなスポーツも、短期決戦のトーナメントでは、日替わりヒーローが命運を分ける。

 一方、ウルフドッグス陣営は忸怩たるものもあっただろう。会見ではジャッジに関して、ニミルの言葉も、ヴァレリオ・バルドヴィンヘッドコーチの言葉も積極的に訳されていなかった。「Ruin」(破滅、破壊)のような強い表現もあって、それは彼らの無念さを意味していた。サンバーズのオリビエ・キャットヘッドコーチも「判定に関しては話したくない」と断っていたほどだ。

 しかし両者が、「もっと見ていたい」と思わせる戦いを演じたのは間違いない。

「まずは、"準決勝を通過するのは簡単ではない"と思っていたので、勝ててホッとしています。ウルフドッグスが(自分たちを)強くしてくれたと思うし、白熱した試合させてくれたことに感謝で、決勝では、ウルフドッグスの分まで戦う責任も感じています」

 髙橋はそう言って、ライバルに最大限の敬意を表した。不条理はあるが、それを乗り越えるのもファイナルの試練か。

 5月3日、有明アリーナで決勝の火蓋が切られる。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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