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『ハイキュー!!』日向翔陽役・村瀬 歩が明かす役へのアプローチ法と、初めて現場で会って「怖いなぁ...」と思った先輩声優 (4ページ目)

  • 坂口功将●取材・文 text & photo by Sakaguchi Kosuke

【学んだことを、さらなる後輩へ】

――その背中を見て、村瀬さんも成長していったんですね。

村瀬 そうですね。3、4年ほど前にあった別の作品の収録で、日野さんと同じ事務所の後輩と仕事をする機会があったんです。その現場が『ハイキュー!!』を収録していたスタジオで、しかもその後輩は、若手の"日向"未南さん。不思議な縁を感じていた時に、日野さんから「うちの日向がお世話になります。今度は歩が後輩たちの面倒を見てほしい。今の歩だったら託せるから」というメッセージがきて......心のダムが決壊しました。

 もちろん日野さんは芝居がとても上手なんですが、後輩の芝居に手を加えることはしません。自分が先輩から教わったことや、これまで培ってきたものを伝えて、あとはその人に考えてもらうというタイプ。だから僕も、若手の日向さんにとってそんな存在になろうと、「僕はこう考えていたよ」という姿勢で接していました。

――そうして学んだことは受け継がれていくのですね。村瀬さんは完成した作品を、それに携わったひとりとしてどのように見ているのでしょうか。

村瀬 声優になりたての頃は、自分の声を聞きながら「こういうふうに聞こえるんだ」と思っていました。でも今では、映像の色使いや使用されているBGM、空間設計や監督の演出などにも注目しています。作品はひとりだけの力ではできません。ひとつの部分が際立ってよくても悪くてもいい作品にはならないので、全体を見るようになりました。

 その感覚はバレーにも似ているかもしれませんが、絵画のほうがより近いかもしれません。例えば、全体として統一したい色合いの中で、対比する色や差し色がうまく入っていると、より作品に深みが出ますよね。アニメ作品における声優の声も同じで、「この場面に合った声はこれだ」と思っていても、2、3テイクかかってしまうのは監督が欲しかった声ではなかったからということ。

 それを、完成した映像やオンエアを見る時にチェックしています。自分が狙った意図どおりになっていたら「やった!!」と思いますし、他の声優さんたちの芝居も気にして見ていますね。今回の『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』も、それを確認しながら完成品を見ていました。

(後編:「古舘春一さん、すごすぎない⁉」と思いながら演じたセリフとは?>>)

【プロフィール】
村瀬 歩(むらせ・あゆむ)

1988年生まれ。米ロサンゼルス出身。大学生の頃に声優を志し、日本ナレーション演技研究所に入所。2011年にテレビアニメ『Persona4 the ANIMATION』で声優デビューを果たす。TVアニメ『新世界より』の青沼瞬役で初めてメインキャラクターの声を担当し、2014年に『ハイキュー!!』の日向翔陽役で初主演を務める。同年の『怪盗ジョーカー』でも主人公ジョーカーの声を担当するなど、その後もさまざまな話題作に出演。2016年には、第10回声優アワードで新人男優賞を受賞した。

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