『ハイキュー!!』日向翔陽役・村瀬 歩が明かす役へのアプローチ法と、初めて現場で会って「怖いなぁ...」と思った先輩声優 (3ページ目)

  • 坂口功将●取材・文 text & photo by Sakaguchi Kosuke

――同じ作品に関わる声優さんたちと長く一緒に演じるうちに、互いの距離感が変わることもあるんでしょうか? 

村瀬 これは以前にも話していることなのですが、(烏野のセッターである)影山飛雄役の石川界人くんとは、当初まったくそりが合わなくて(笑)。作品中の日向と影山のように、「この人が相方なの?」と思っていた時期がありました。もちろん今では頼れる存在ですし、本当にいい相棒。お互いにリスペクトしています。

 当時の僕はまだキャリアが浅く、演じる役の視点で相手を見てしまっていた部分があったんでしょう。今は芸歴も15年近くになるので、そうなることはありません。(音駒のセッター・)孤爪研磨役の梶 裕貴さんとも、ここ3、4年で共演させていただく機会も増えましたし、いつもフラットに雑談する間柄です。梶さんは本当に優しくて、「いいお兄さん」という感じですね。

――今作では日向と孤爪、烏野と音駒といったように、「興味と尊敬を抱く相手」が描かれます。村瀬さんにも、そうした存在はいらっしゃいますか?

村瀬 たくさんいますが、中でも『ハイキュー!!』で烏野のキャプテン・澤村大地を演じている日野 聡さんを尊敬しています。

 約10年前、初めて『ハイキュー!!』の現場でお会いした時の日野さんは今の僕と同じくらいの年齢(35歳)だったのですが、現場のど真ん中で、腕を組んでイスに座っていて。声も低いし、「怖いなぁ......」という印象だったんです。

そうして第1期の収録が終わって、第2期に入ると日野さんの雰囲気もだんだんと柔らかくなり、よく話すようにもなりました。その数年後に別の作品の現場で一緒になった時、日野さんのキャラがまるで違ったんです。いろんな人たちと気さくに話しているし、イジったりもしていた。だから聞いてみたんですよ。「『ハイキュー!!』の現場では、いつもとは違う立ち振る舞いを意識していたんですか?」って。

――日野さんはどう答えたんですか?

村瀬 「俺は(澤村大地という)キャプテンの役を任されて、一番先頭にいなければいけない。それに、日向と影山を担当する声優がまだ若手だったから、2人を引っ張っていくためにも、『自分が先輩たちの背中を見て育ったように、俺の背中を見せられるように頑張らないと』と意識していたんだ」とおっしゃっていました。

 現場を引き締めるためとはいえ近寄りがたい雰囲気を自ら作るのは、普通は怖いじゃないですか。嫌われたくないし、僕もどちらかというと、みんなと笑顔でやっていきたい性分なので。でも、その時の日野さんが、そういった形で作品作りへのリスペクトを示してくれたことは、僕の財産になっています。

 僕は『ハイキュー‼』の収録が始まった頃、全然うまくできなくて、夜遅くまで居残りすることもありました。ただ、それでも日野さんは、最後までつき合ってくれた。最初は「怖いお兄さんが後ろにいる......」などと思っていましたが、自分が困った時や悩んでいる時に、「これはどういう意図でやっているの?」「どんな思いでやっているの?」と声をかけてくださった。自分の頭で考える訓練もしてくれたんです。

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