江畑幸子が竹下佳江の10cm変更トスに「すごい」。ロンドン五輪の大一番直前にあった驚きの指示 (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari

 当時の日本代表は登録メンバーが多く、世界選手権など大きな国際大会を戦えるメンバーはひと握り。当時20歳の江畑はチーム最年少で、周囲はすでに日本代表で実績がある選手ばかりだった。「私がここにいてもいいのかな」と悩んだこともあったが、「立場とか経験とかは考えず、絶対に自分のいいプレーをしよう」と気持ちを切り替えた。

 代表での"初陣"は、若手選手が多く起用される場だったモントルーバレーマスターズ。竹下佳江や木村沙織といった、すでに代表で実績がある選手たちは出場しない大会で、江畑は十分に存在感を示した。

「1試合目は出番がなく、2試合目に2枚替えで少しだけ出たんですが、けっこうスパイクを決めることができたので手応えはありました。次の日、スタメンで出た試合はかなり調子がよかったですね。私はときどき、自分でもビックリするぐらい何でもうまくいく時があって、この日もその『当たりの日』だったんです。具体的な数字は忘れましたが、かなり得点を決められたと思います」

 その活躍から、江畑は同秋の世界選手権のメンバーにも選ばれ、銅メダル獲得に貢献した。日本女子バレーが世界のトップで戦えることを証明した大会だったが、江畑にとっても飛躍のきっかけになった。

「私にとっては初めての大舞台だったので、すごく印象に残っている大会です。竹下さんや沙織さんなど、それまでテレビで見ていた選手たちと一緒にプレーできたことも、すごくうれしかったですね。大会期間中に21歳の誕生日を迎えたんですが、その日の試合が一番活躍できた(チームトップの24得点)ので、いい記憶ばかり残っています。

 強いて言えば、3位決定戦のアメリカとの試合に出られなかったのが悔しかった。それでも、日本での開催だったこともあって、たくさんの方が見てくれている中で試合ができることは幸せでした。次の年のVリーグは、2部の試合でもお客さんが増えたので、注目度の高さを感じましたね」

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