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「錦織圭引退」の誤報はなぜ生まれたのか 現地ジャーナリストが大会主催者に取材して見えた騒動の舞台裏 (3ページ目)

  • スコープ・マリノフスキ●取材・文 text by Scoop Malinowski  内田 暁●翻訳 translation by Akatsuki Uchida

【錦織圭の物語はまだ続く】

 では、なぜこのような誤った噂が飛び交ったのか?

 大会の共同オーナーであるスティーブ・ガラレックに「なぜエリザベス・ムーアは、圭がこの大会で引退すると言ったのか?」と尋ねた。

 すると彼は、「彼女はそんなことを言ったことはない」と言いきった。「大会が始まる前から、圭たちはあらゆる可能性を模索していた。万全の状態になるまで待ったうえで、出る大会を決めるというふうに圭の関係者から聞いていた」というのが、ガラレックの答えだった。

 ここからは私の推測になる。

 この大会の一部関係者は、大会のプロモーションのために「錦織が引退するかもしれない」との噂を流したのではないだろうか? というのも、今年の同大会はIMGアカデミーで開催されたが、その契約が締結されたのはわずか1カ月前。そのため、大会に向けたマーケティングや広報活動が遅れていたのだ。

 いずれにしても、黄金時代を築いた偉大な選手のひとりである彼の物語は、まだ続きそうだ。今の錦織に引退を考えている様子はまるでなく、再びATPツアーのトップレベルで戦うために、全力でトレーニングと練習に打ち込んでいるからである。

 おそらく彼は、自身の内にある特別なテニスの才覚と、これまで積み重ねてきた成功体験を根拠に、まだすばらしいプレーができると信じているのだろう。フェデラー、ジョコビッチ、ナダル、そして古くはケン・ローズウォール(オーストラリア)、ジミー・コナーズ(アメリカ)、アンドレ・アガシといった名選手たちが、35歳以降も輝き続けたように。

 一方で現実的には、彼の体はそのプレースタイルゆえに、満身創痍でもあるだろう。小柄な体で長いラリーを要すマラソンマッチを、20年近くATPツアーのトップレベルで戦ってきたのだ。錦織と同等の体格の選手たち──マイケル・チャン(アメリカ)やレイトン・ヒューイット(オーストラリア)、マルセロ・リオス(チリ)らが20代後半から30代前半で第一線を退いたことを考えれば、その負担は計り知れない。

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