「錦織圭引退」の誤報はなぜ生まれたのか 現地ジャーナリストが大会主催者に取材して見えた騒動の舞台裏
2026年4月、テニス界に激震が走った。
「錦織圭がサラソタ・オープンで現役引退を発表するらしい」
かつて世界4位にのぼり詰め、テニス黄金時代の一翼を担ったレジェンドの幕引きという報せは、瞬く間に世界中を駆け巡り、ファンを動揺させた。
しかし、フタを開けてみれば引退発表はなく、そこにはコートで再起を期す情熱的なプレーヤーの姿があった。
現場ではいったい何が起き、なぜ誤報が生まれたのか──。2013年から同大会を毎年取材しているフロリダ在住のテニスジャーナリスト、スコープ・マリノフスキ氏が騒動の裏側をレポートする。
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昨年12月で36歳になった錦織圭 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 錦織圭が16年ぶりに、フロリダ州開催のエリザベス・ムーア・サラソタ・オープン(ATPチャレンジャー)に帰ってきた。
同大会に最後に出場した2010年当時の彼は、「次世代のスター候補」の20歳。その名声を証明するように優勝した。
あれから時を経て、現在の彼は36歳。将来的には国際テニス殿堂入りも期待される名選手だが、今の世界ランキングは500位に近い。
世界4位にのぼり詰め、ロジャー・フェデラー(スイス)やラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ダビド・フェレール(スペイン)、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、アンディ・マレー(イギリス)、スタン・ワウリンカ(スイス)といったテニス黄金期の強豪たちを打ち破った頃とは、大きく状況が変わっていた。
この日本人レジェンドのサラソタ大会出場は、一球もコートで打つ前からテニスファンの間で大きな話題をもたらすことになった。私自身も大会関係者から、「錦織がサラソタ・オープンで引退を発表する可能性がある」と聞いたからだ。
ソーシャルメディアで「錦織がサラソタでの引退を検討している」との投稿が出ると、それは雪だるま式に大きくなり、引退の噂は世界的なニュースへと発展した。
数日後、大会のメインスポンサーである慈善家のエリザベス・ムーアが、地元紙『サラソタ・ヘラルド・トリビューン』の取材で「錦織の最後の大会はサラソタになる」と発言。するとフランスのスポーツ専門誌『レキップ』も、錦織がサラソタで引退すると報じた。
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