錦織圭が「試合直前で棄権」を繰り返すのはなぜか 西岡良仁は「『動いてなんぼ』のテニス」が原因と推察
◆連載「錦織圭という奇跡」最新話>>奈良くるみ「『SLAM DUNK』を貸してくれたのは、圭くんだった」
「Kei Nishikori」の名が大会公式ウェブサイトのスケジュールから消えたのは、試合前の練習を終えてから、ほどなくしてのことだった。
そこからしばらく時間を置き、「右肩のケガによる欠場」が公式に発表される。グランドスラムとしては2010年の全米オープン以来、全豪オープンとしてはキャリア初の予選出場は、試合直前に見送られた。錦織圭の2026年シーズンは、苦渋の決断とともに幕を開けた。
練習中に右肩を押さえて痛みを確認する錦織圭 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 錦織の今シーズン開幕戦は、1週間前にキャンベラで開催されたATPチャレンジャー。全豪オープン予選を控え、調整を兼ねた試合となるはずだった。だが結果は、1回戦の途中棄権。肩のケガが理由だった。
もっともこの時点では、全豪オープン予選の出場には前向きとの声が周囲から聞こえてきた。予選開幕前には日本人選手たちに声をかけて決起会的な食事会を開き、「みんながんばろうね」と後輩選手たちを励ましていたという。
予選初戦の前日にも、坂本怜らを相手に会場で練習。ただしサーブは、肩に負担をかけないように軽く打つ程度。不安を残しているのは、明らかだった。
この5年ほど常にケガに悩まされ、シーズンを通して安定して試合に出ることの叶わぬ錦織ではある。しかし本人のなかでは、「体さえ戻ればまた上に行ける」との確信にゆらぎはなかっただろう。
本質的に、その思いは今も大きくは変わらぬはず。ただ、昨年11月に横浜市開催の慶應チャレンジャーに出場した際は、「ちょっと不安ですね。本当に戻れるのかなって」と、今まで公(おおやけ)には口にしなかった不安を素直に吐露していた。
ケガとの戦いとは、時間の経過とともに回復する体と、他方で失っていく試合勘のグラフ線が、どこで交錯するかを見極めることでもあるだろう。完治するまで休みたいとの思いもあるだろうが、現行のテニスツアーのシステムでは、それもままならない現状がある。
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著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。













