「私の父も、ボールキッズをやっていたんです」加藤未唯が混合ダブルス優勝で手にしたボールガールからの笑顔の言葉

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【彼がずっと助けてくれた】

 そして、3回戦──。

 加藤にとってもっともつらく、ゆえにもっとも大事だったこの試合を切り抜けた時、加藤は「心地よくプレーさせてくれた」と、パートナーへの謝意を真っ先に口にした。

 準決勝に勝利した時も、加藤はまだ「試合を楽しめていない」と視線を落とす。

 その彼女が、縦横にコートを駆け、男子選手のストロークにも身体ごと飛び込みボレーを決める"らしい"プレーを発揮したのが、対ビアンカ・アンドレースク(カナダ)/マイケル・ヴィーナス(ニュージーランド)の決勝戦だった。特に、第1セットを失い、迎えた第2セットの中盤頃から見せ場が続いた。

 並走状態で迎えた第9ゲームで、2019年全米オープン単優勝者のアンドレースクがボレーをミスして「あー!」と落胆の声を上げるのを、加藤は反撃の機と捉える。快足を飛ばしてドロップショットを拾い、頭上を越そうとする相手の返球をスマッシュで叩き込んだ。

 このゲームをブレークすると、続くサービスゲームではパートナーの緊張を察し、自ら仕掛けてセットを奪うボレーを叩き込む。

 10ポイント先取のマッチタイブレークでも、立ち上がりからボレー、そしてスマッシュと、加藤の小柄な身体が宙を舞った。これまで「ずっと助けてくれた」プッツを最後は加藤が牽引するように、ふたりはフィニッシュラインを駆け抜けた。

 テニス大会の慣例である、表彰式でのウイナースピーチ。

 加藤は「英語があまり得意ではないから...」と少し恥ずかしそうに笑い、用意してきた紙を取り出した。

 パートナーのプッツ、女子ダブルスパートナーのアルディラ・スチアディ(インドネシア)、コーチ、そして励ましの声を届けてくれた世界中の人たち──支えてくれたすべての人々に、あふれる感謝の思いを述べる。

 そして、失格試合の対戦相手には「またいい試合をしましょう」と呼びかけ、ボールガールに「無事でいてほしい」の願いを送った。

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