「私の父も、ボールキッズをやっていたんです」加藤未唯が混合ダブルス優勝で手にしたボールガールからの笑顔の言葉 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【運命の1分で誕生した急造ペア】

 混合ダブルスの出場登録は大会会場で行なわれ、ペアを組む2選手のランキング合計値で出場の可否が決まる。そこで選手たちは、カットラインのあたりをつけてパートナー選びをするのだが、実際のところはフタを開けてみなければわからない。

 そして今大会は、混合ダブルスに出場する選手のレベルが、例年よりはるかに高かった。出場登録デスクの前では、予定していたパートナーとでは出場できないことが判明し、途方にくれる選手たちが溢れたという。

 加藤も、そしてプッツも、そのような当てが外れた面々のひとりだった。

「僕はもともとベルギーの女子選手と組む予定だったんですが、彼女とでは(出場枠に)入れないことがわかったんです」

 柔和な笑みを浮かべ、3カ国語を操るドイツ人は、流暢な英語で説明する。

「もう締め切りの1分前。これは入れないな......と途方に暮れていたら、ミユも同じように立っていたんです。ミユはサンダー・ジレ(ベルギー)という選手と組むはずだったんですが、やはりふたりも入れないという。

 そこでサンダーは、親切にも『よかったらミユと組んだらどう? そうしたら入れるよ』と僕に言ってくれたんです。僕らは、その時が初対面。そこでミユのほうに向かっていくと、彼女が最初に僕にかけてくれた言葉は『あなたのランキングは?』だったんだ」

 ユーモアなその語り口に、会見室が笑いに包まれる。「結果オーライ」の急造ペアが誕生したのは、文字どおりの"ラストミニット"だった。

 今になって振り返ると、それは加藤にとって、"運命の1分"だったかもしれない。

 1回戦の時点で加藤は、まずはパートナーのダブルスの腕前に驚かされた。プッツの巧みなフェイントに、自分が引っかかってしまったほどだという。

 2回戦では、プッツの高いコミュニケーション力と、紳士的な振る舞いに感嘆する。チェンジオーバー時にベンチに座っていると、日よけの傘を差すボールキッズに「僕はいいから、彼女を日陰にしてあげて」と気を遣ってくれたという。

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