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西岡良仁「僕は限界だと思う線を越えられる」。ツアー2勝目、錦織圭に次ぐ快挙達成は勢いや運ではない (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

西岡が仕掛けた巧妙な罠

 グッドルーザーの憎まれ口は、西岡にとって最高の誉め言葉だ。

「シャポ(シャポバロフの愛称)は、自分のなかでも勝てるチャンスのある選手だと思っていたので、うれしいですね。どうしても取れないボールもあるけれど、ミスもある選手なので」

 試合後のインタビューで、西岡はあらためて言う。

 もちろん、その相手のミスを生んだのは、周到に張りめぐらされた西岡の策にして罠だ。

 この日の西岡の基本戦術が、相手のバックサイド狙いであることは明らかだった。通常ならフォア側に打ちたいところを、一本、もう一本と、バックへの攻撃を重ねた。

 得意のフォアハンドで叩きたいシャポバロフは、いらだちもするし、焦れてくる。その心理を見透かしたように、第2セットに入ると西岡は、フォアにもボールを散らし始めた。時には、シャポバロフが鮮やかなウィナーを奪うこともある。だがそれ以上に、攻め急ぎ、ミスが増えた。

 そうして相手がフォアの精度を高める前に、またバックにボールを集める。相手からすれば、最後は何をすればいいかわからなくなっただろう。

 このような西岡の知略は、彼がプロになった18歳の時から変わらぬ武器。ただ、今年に入ってふたりのトップ10プレーヤーを破り、ツアー決勝に2度進出した実績は、それだけで残せるものではない。

 飛躍の要因として大きいのは、ひとつは、フィジカルの強化とショットの質の向上だ。この半年ほどで上半身がさらにひと回り大きくなったのは、近くで見ると明確に感じることができる。

「今回の大会、僕、メチャメチャ打っていった実感があります」と彼は言う。

「ルード選手との試合もそうだし、昨日の準決勝もそうでした。今日の決勝はスピンを多く使いましたが、上の選手としっかり打ち合えたのは大きかったです」

 そのうえで、「今日は正直、ギリギリで打ち合っている感覚もあって」とも彼は言う。自分を過剰に大きく見せることなく、率直に実感と客観を照合する冷静さこそが、自信と実績の表れだとも感じられた。

「たしかに今の男子テニスは、どんどんパワー化している現状ではあります。ただ、パワーのある若い選手たちにミスがないかと言えば、そうではない。入ったら取れないショットというだけで、それは仕方ないと割りきっています」

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