錦織圭から聞いたことのない発言「カッコいい姿を子どもたちに見せたい」。コートを離れた9カ月間で変わったこと (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

目標は「トップ10に戻りたい」

 以前の錦織は、あれほどの人気と実績を誇りながらも、どこか「ロールモデル」と見なされることに照れや戸惑いがあった。彼自身がチャレンジャーであることを望んだため、仰ぎ見られることをよしとしなかったのかもしれない。

 その彼が最近では、「自分がトップに出たことによって、西岡(良仁)選手やダニエル選手が出てきたのはあると思う」と自身の功績を客観視し、「日本人の自分ができるんだというのを、まずは示したい」と使命感を口にした。

 さらには復帰の目標のひとつとして、次のようにも語っている。

「今は自分の現役の姿を......背中を見てほしいというか、カッコいい姿を子どもたちに見せたいなという気持ちが一番にあります」

 これらの発言は、数年前の錦織の口からは、あまり聞けなかった言葉だろう。

 プロテクトランキングが有効なのは、最初に用いてから9大会、もしくは復帰後の9カ月間である。9カ月前、21歳以下はひとりもいなかったトップ10圏内に今は3人いることを思えば、9カ月後には、一層の世代交代が進んでいる可能性は高い。

 それでも錦織は、「トップ10に戻りたい」と明言する。

 後世に何かを残したい、あとに続く者たちに何かを伝えたい----。コートを離れた間に宿した情熱こそが、次にコートに立った時、錦織に新たな"戦う意義"をもたらすはずだ。

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