伊達公子が日本テニス界に切実な危機感。「変えるなら今。これがラストチャンス」 (4ページ目)
今の選手のほうが情報が多い分、ドライだったり、夢が現実的なところもあると思います。私たちの時代は情報がなかったので、ただひたむきに突き進むしかなかったし、それがよかった部分もあったのかもしれない。いろんな要素が重なり合っていると思います。
昔のほうが、選手間のライバル視も強かったですね。今の子はよくも悪くもドライで、お互いをライバル視しない。何なんでしょうね......トレーニング環境も今のほうが充実しているし、身体も鍛えやすいはずなのに、今の子のほうが弱っちい感じもするし(笑)。
難しいですねぇ、その答えは。今の時代でできないはずはないと思っているんですが、その答えがわからなくて」
1990年代。伊達公子が世界の壁に穿った穴に次々と選手が飛び込み、グランドスラムに常時10人近くの日本人女子選手が出場した時代があった。2022年1月3日時点、シングルスランキングでトップ100入りしている日本人選手は、大坂なおみひとりである。
伊達が自ら育成に立ち上がり、協会の理事にも名を連ねた背景には、これら現状への切実なる危機感があった。
「私が協会の理事を引き受けたことで、いきなり何かが大きく変わるとは思っていません。ただ、土橋(登志久・強化本部長)さんや坂井(利彰・協会理事)君など、本気で日本のテニス界を変えたいと思っている人たちが現場で動いている今が、ラストチャンスかなと感じて......。それが、私が最終的な決断を下した理由です。
もともと、私は組織に入ることに興味がなかったし、入っていないからこそ、自分の思っていることを口にできると思っていました。入ってしまうことで、言いたいことが言えなくなるのが嫌だったんです。でも今、同じような想いを根底に持っている人たちが、中長期的なビジョンのもとに現場で戦っている。その姿を、信じようかなと思いました。
その代わり、ラストチャンス。今、変わらなかったら日本のテニス界は変わらないと思うので、そこにかけてみよう、一緒に突き進むことで変えられればと。
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