伊達公子が日本テニス界に切実な危機感。「変えるなら今。これがラストチャンス」
伊達公子インタビュー@前編
「それがわかったら......それがわかったらぁ」
腕を組み、首を傾げ、笑み混じりにしかめた口もとから、苦渋の言葉がこぼれた。
どうすれば、第二の伊達公子を育てられるのか?
その命題を幾度も自身に問いかけ、誰より必死に答えを探してきたのが、ほかならぬ伊達公子本人だ。
海外留学等の経験なし。親族にトップアスリートやテニス関係者なし。テニス強豪高校の部活動で全国優勝を目指していた少女は18歳でプロの世界に飛び込むと、1990年代に世界の4位まで駆け上がった。
一度は26歳の全盛期に引退し周囲を驚かせるも、その12年後の現役復帰および活躍で、一層の衝撃を世界中のファンや関係者に与えた。
単複でツアー優勝も成した10年のセカンドキャリアを成功裏に終えた今、彼女は「リポビタンPresents KIMIKO DATE x YONEX PROJECT」を立ちあげ、後進育成に情熱を注いでいる。
さらに昨年6月には、日本テニス協会理事に就任。"孤高の人"の組織参加は、大きな決意を感じさせる動きだ。
30年にわたり、この競技を内外から見てきた伊達の目がとらえる、日本テニス界の問題点とは? そして、見据える未来像とは?
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伊達公子さんに日本テニスの未来について話を聞いたこの記事に関連する写真を見る 時にやさしく、時に手厳しく、言葉を紡いだ。
2021年12月、伊達は一冊の書籍を上梓した。ベースとなるのは、2018年に早稲田大学院スポーツ科学研究科で作成した修士論文。『コートサーフェス研究 −砂入り人工芝ではトップテニスプレーヤーは育たない−』というタイトルが過不足なく語るとおり、ツアー非公認の「砂入り人工芝」コートが選手育成の弊害になっていると訴える内容だ。
ハードコートの必要性を強く訴える理由とは?
「世界への育成強化の観点で、今も主張を続けています。端折って言うとハードコートなんですが、根本的には世界基準のコートであれば、クレー(赤土)でもいいんです。ただ、日本の風土を考えると、管理やメンテナンスにかかる経費的にもハードコートのほうが向いているのではないかと思いました。
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