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大坂なおみの聖火点灯後に海外記者が受けたショック。ネガティブコメントに違和感を抱いた理由 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 ただ、聖火が照らす華やぎのなかに、不吉な影もよぎったという。

「自国開催のオリンピック出場は、おそらく彼女のキャリアで一度しか訪れないチャンス。その大会に彼女は、全仏オープンでの会見拒否で注目を集め、2カ月間試合をせずに挑んだ。理想とは程遠い状況です」

 カラヨル氏がそのような危惧をより強めたのは、大坂が初戦で快勝したあとの、ミックスゾーンを見た時だった。

「テニスは毎週のように大会があり、毎日のように会見が行なわれますが、メディアの顔ぶれはほとんど同じ。それがオリンピックでは、顔ぶれはガラリと変わり、会見の形式も違います。

 ナオミの初戦後のミックスゾーンでは、大量のテレビカメラや記者たちが久々にメディアの前に姿を現す彼女を捉えようと、待ち構えていました」

 大坂が自身の行為の帰結と真の意味で対面し、事の重大さに気づいたのは、この時だったのではとカラヨル氏は推察した。

 3回戦での敗戦後。一度は回避したミックスゾーンに現れた大坂が「1回戦で負けないでよかった」と口にした時、カラヨル氏は、はたと我に返ったという。

「この大会が始まる前は、置かれている状況が厳しくても、きっとナオミは成功するのではと思っていました。これまでにも、重圧を力に変える彼女の姿を何度も見てきましたから。

 ただ、今こうして振り返ると、その考えは非現実的です。2カ月間試合に出ず、批判の声にもさらされ、とてつもない注視と重圧を背負ったなかで優勝したら、それはまさに奇跡です。3回戦での敗戦こそが、ありえる"現実"でした」

◆大坂なおみが投じた一石。外国人記者が会見で感じた違和感とは何か>>

 もちろん今も、大坂が世界最高の選手のひとりであることは間違いなく、今大会の結果はそれを棄損するものではない。

「ただ、人生で一度切りのチャンスを、こんな形で逃す彼女を見るのは、とても残念だった」

 それがカラヨル氏の、率直な思いである。

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