デビスカップの変革に賛否両論。ATPカップとの問題も抱えている (4ページ目)

  • 神 仁司●文・写真 text&photo by Ko Hitoshi

 ATPカップは、賞金総額1500万ドル(約16億円)、24カ国が参加する国別対抗戦。国のエントリーはATPランキングに基づき、各国選手の中で最も高いランキングを保持する選手のランキングが基準になる。例えば日本は、錦織の7位(9月13日)の時のランキングがエントリーの対象になって、ラウンドロビン(予選)はグループBに入ることになる。試合数は1つの対戦で、シングルス2試合、ダブルス1試合でデビスカップと同じだ。

 ジョコビッチによれば、ここ3年間に選手会でも、さまざまな観点から「ATPカップのあるべき形」と「デビスカップの変革」について話し合われてきたという。

 現在続々と、参加国のナンバーワン選手が、かつての名選手からキャプテンを指名。例えば、アンディ・マリーがティム・ヘンマンを、アレクサンドラ・ズベレフがボリス・ベッカーを指名し、世界的にも有名選手であった各国のレジェンドが担ぎ出されて、いわばATPカップの広告塔の役目を果たしている。

 ちなみに、日本は、錦織圭が岩渕聡をキャプテンに指名したが、日本テニス協会としてのバックアップは整っていないということだ。

「まずデビスカップが新しくなったところに、(日本テニス)協会全体でいろんな手続きを含めて突き進んできた感じでした。正直、ATPカップへの協会の中での立ち位置がまだはっきりしていないような気がします。ATPツアー寄りの、選手寄りの大会であるという認識は、デビスカップよりは強い。ただ、団体戦で国別なので、実際に1月に戦ってみないとどうなるかわからないですね」(岩渕)

 ATPカップは、デビスカップと違って、賞金だけでなくランキングポイントも獲得できるが、選手に国の代表として戦う意識がどれだけあるのかは、ふたを開けてみないとわからない。

 デビスカップが2019年11月24日に終了して、2020年1月3日からATPカップが開催。わずか6週間の間隔で、異なるフォーマットの国別団体戦が行なわれるという異常事態だ。これはデビスカップが、これまでのように"唯一の国別対抗戦"ではなくなったことを意味する。ジョコビッチは、2つの国別対抗戦の存在に疑問を投げかける。

「長い目で見て、2つの大会が共存できるとは思えない。スケジューリングはいつも問題です。僕の意見としては、デビスカップとATPカップは将来的に統合するのがいいんじゃないかな」

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