錦織圭、30歳を前にスタイル変更を決断。「前に出る」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 その大台を今年の12月に迎える錦織は、現時点のフィジカル面について、「リカバリーの点では、多少は20代前半より遅いのかなというのはあるかもしれませんが、まだそこまで感じてないです」と言った。

 同時に「でもここから、リカバリーやいろんなことが上がっていくとは思いにくい」とも自覚する。ケガに対する恐れや不安も、やはり拭い切れはしない。

「僕の身体やテニスを考えると、なかなかケガしないのは難しいかなと思います」と、その点に関しては、なかば諦念とともに受け入れている様子だ。

 だからこそ彼は今、多少のリスクを承知のうえで、プレースタイルを変えることを志している。その決意やビジョンを「大きな目標があるので、そこに揺らぎはないです」と断言し、「目指すのは攻撃的なテニス。前に出るのを増やしたい」と明言した。

 ただ、だからといって直線的に理想形へと邁進できるかと言えば、そんなに簡単な話ではない。

「やりたい思いはあるけども、自分のテニスの調子だったり、自信だったり、コートサーフェスや風などのコンディションだったり、そういうのもいろいろと関係してくるので、やりたくてもできない期間はある。また、メンタルスポーツでもあるので、自分のメンタルの持っていき方によって、なかなかできない時もあります」

 進むべき方向性に関して、迷いや葛藤は抱いていない。ただ、その目指すテニスを貫く難しさを、彼は「試練」の言葉に込めた。

 ローマ・マスターズのクレーコートは柔らかく、他のそれと比べても(バウンド後の球速が)若干遅いと、錦織は説明する。ならば、ネットに出ていくことは、一層大きなリスクを伴うだろう。とはいえ、普通にプレーしていては、ラリーが長引きやすいコートに体力を削られてしまう。

 ローマの赤土は矛盾をはらむ。そしてだからこそ、彼が求める「自信」や「メンタルの持ってき方」を掴み取る、格好の「試練」の場にもなるはずだ。

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