錦織圭、30歳を前に
スタイル変更を決断。「前に出る」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「あなたが、今年の全豪オープン準々決勝のノバク・ジョコビッチ(セルビア)戦を棄権した時、マッツ・ビランデルは『2週間で7試合を勝ちきるのは年々難しくなる。だから、グランドスラム優勝の可能性も、どんどん低くなる』と言っていました。このコメントについて、どう思いますか?」

 ローマ・マスターズの開幕を控えた、トップ選手の会見の席のこと。地元イタリアのメディアから錦織圭に、そのような質問が向けられた。

錦織圭は積極的にネットプレーを見せるようになった錦織圭は積極的にネットプレーを見せるようになった ここで言及されたビランデルとは、過去7度のグランドスラム優勝を誇る往年の名プレーヤー。引退後は『ユーロスポーツ』や『レキップ』紙を中心に活躍している解説者・コラムニストである。

 そのテニス界きっての識者の言葉を受け、錦織は「全豪ではほぼ毎試合、4時間の5セットマッチを戦っていた」と前置きしたうえで、こう続けた。

「あんなに長い試合をすべきではなかった。7試合を勝つためには、試合時間を短くしなくてはいけない」

 この言葉に象徴されるように、今季のプレーを見ていても、錦織が自分のテニスを変えようとしていることは明らかだ。

 ネットに出る機会は、以前より確実に増えただろう。過去には奇策的に試みていたサーブ&ボレーも、今ではひとつのオプションとして恒常的に用いている。昨年2月に右手首のケガから復帰して以降は、サーブのフォームも変えて高い安定感を求めてきた。

 それら改革の源泉にあるのは、試合時間を短縮し、連戦を勝ち上がるために体力を温存する目的意識だ。

 まだ20代前半の頃の錦織は、自身の将来的な体力や身体の状態について、幾度か不安を口にしたことがある。

 果たして、いつまでキャリアを脅かすケガなくプレーできるのか?

 一年を通じて転戦と連戦続きのツアーのなかで、どこまで体力を維持できるのか?

 それは、「30歳になった自分がどんな感じなのか、想像がつかないです」と吐露していた彼が時折襲われてきた懸念だ。

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