2019.05.17

大坂なおみが連勝で世界1位を維持。
「不可避」要素をプラスに変えた

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「それは、現状に対して不平不満を言う代わりに、受け入れる術(すべ)を見つけられるようになったことじゃないかしら?」

 昨年までと比べて、クレーコートでのプレーでよくなった点とは?

 BNLイタリア国際での会見でそう問われた大坂なおみは、迷いなき口調で明言した。

西日を浴びながらベスト8進出を果たした大坂なおみ 赤土のコートが最も難しい点を、彼女は「バウンドが一定ではなく、イレギュラーが多いこと」と、過去に何度も口にしてきた。クレーの大会ではたとえ同じ会場でも、コートによって表面の砂の量や地面の硬さなどが微妙に異なる。あるいは同じコートですら、その日の気象状況などによって刻一刻と性質が変化する。

 そのようなクレーコートの気難しさに、かつての大坂はフラストレーションを溜め、プレーを乱すこともあった。だが、今はその現実を認めることで、結果を手にしつつある。

「クレーコートシーズンは”不可避”。逃げるわけにはいかないから」

 彼女はそう言うと、「今日は小難しい言葉を使ってみたわ」と、いたずらっぽい笑みをこぼした。

 彼女が「不平を言う代わりに、現実を受け入れた」のは、一日に2回戦と3回戦の2試合を強いられた今大会のスケジュールに対しても同様だ。

 大坂の2回戦が組まれた大会4日目のローマは、朝から降り続く雨が夜になっても止む気配はなく、予定されたすべての試合が翌日順延となった。

 朝からラウンジで待ちに待ち、結果的に試合のキャンセルを告げられたのは、夜の7時頃。ホテルに戻り、そして目にした翌日のスケジュールで、大坂は自分の第1試合が、通常の開始時間よりも早い朝の10時に組まれたことを知る。

 その時、彼女の胸に湧き上がった最初の感情は、「10時開始に対する不満であり、失望」であった。

 だが、彼女は、別の側面に目を向けてみる。「早く始まったほうが、夜遅くまで試合をするよりもはるかにいい」と自分に言い聞かせ、翌朝のセンターコートに足を踏み入れた。