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天才少女・奈良くるみも27歳。
悪循環終止符へ「変わらなくていい」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 奈良より3歳年少の日比野菜緒は、その思いこそが、日本代表への情熱の中核にあると言った。

 小学生の頃から国内のタイトルを総ナメにしてきた奈良を、周囲は「天才少女」「超エリート」と見なしたが、本人の見解は周囲とまるで違う。

「私は才能もないし、本当にコツコツ積み上げてここまで来たので......」というのが、自己評価。

 目標や目指す地点を尋ねても、答えはいつも「100%の力を出し切ること」「常に成長を感じられること」と、プレー同様に安定している。

「経験が邪魔になっているのではないか?」という無垢なジレンマを抱え、それを克服しつつ前に進むのも、今に連なる彼女の変わらぬ姿勢だろう。

 もっとも、今週京都で開催された国際大会で奈良と対戦した19歳の本玉真唯は、最終セットに入った時、奈良が全身から放つ「まだまだ戦える、今から試合が始まる、という雰囲気」に、完全に飲まれてしまったと言った。本人が意識しなくとも、経験と実績が醸し出す威厳や気配を、周囲は確実に嗅ぎ取っている。

 フェドカップでは「100%、力を出し切れた」という奈良は、その実績をたずさえ、再びツアーへと戻っていく。もちろん、目指すはトップ100とその先だが、「私ははるか先を目指すより、目の前を見ないとがんばれないタイプなので」と、全力を注ぐのはあくまで今、この瞬間だ。

「選手によっては『絶対にコイツには負けたくない』というライバル心がエネルギーになると思いますが、私はとにかく自分を上げて強くしたいというのがモチベーション。人に負けない努力をすることが面白いし、ツアーや選手生活もそこが一番の魅力なので。そこは、あんまり昔から変わらないというか」

 そんな彼女も、「いつか自分も『コイツには負けたくない』というライバル心を抱き、それを活力とする日が来るのでは」と、未来を予想したこともあるという。

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