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錦織圭、ガスケを退け決勝へ。
10年前の完敗があって今がある (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 自信を持っていたタイブレークを失ったこのとき、精神的に落ち込んだことをガスケは否定しない。そして錦織の"経験"は、ここが「叩きどころ」だと彼に告げた。第2セット最初のゲームを錦織は、巧妙なドロップショットや強烈なリターンを連ねてブレークする。

「第1セットを失って落ち込み、さらに第2セットの第1ゲームを落としたときに、自信を失ってしまった」

 敗者がそう顧(かえり)みれば、勝者は「ブレークした後から、伸び伸びプレーできた」と穏やかに振り返る。

 最終スコアは、7−6、6−1。

「僕のプレーは悪くなかった。今日の圭は、すべてのプレーが僕よりよかっただけ」

 敗戦を全面的に受け入れるガスケは、かつて「もう少し待ってあげなよ」と同情を寄せた相手と自身の現況を、次のように述懐した。

「彼はずっとトップ10にいた選手で、僕は今、ランキングが下がって30位前後にいる。そのあたりの差も出たんじゃないかな」と。

 尊敬するガスケを退け、勝ち進んだその先は、錦織にとって通算24度目のツアー決勝の舞台となる。これまで「決勝の前夜にぐっすり眠れたことはない」という彼には、迎える眠りの浅い朝も、試合前に覚える胃の痛むような緊張も、すでに幾度も経験した身心の記憶である。

 初優勝のそのときから積み重ねた、10年の歳月の深み――。踏破した道のりで醸成した風格を身にまとい、錦織は3度目となるジャパン・オープンのタイトルを掴みにいく。

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