【バスケット】八村塁の日本代表復帰宣言 「プレーヤーファースト」を説き続けた信念と日本協会の変化
日本代表への強い意欲を宣言した八村塁(写真は2025年) photo by Kyodo News
NBAで自身の価値を高めてきた八村塁が、日本代表への復帰を自ら明言した。この夏はロサンゼルス・クリッパーズと新たな契約を結んだあと、日本をベースに自身の次世代育成イベント「BLACK SAMURAI」に向けた準備を進める中でのことで、8月末に行なわれるワールドカップアジア予選Window4への出場も現実性を帯びている。
パリ五輪後、日本バスケットボール協会の運営体制について痛烈な批判を発信した八村、その批判を受けて変わり始めた日本協会。八村が一貫して重要性を強調する「プレーヤーファースト」を軸にその背景を探る。
【「プレーヤーファースト」の重要性を説き続ける理由】
八村塁にとって、今年はNBAキャリア2度目の岐路となる夏となった。NBA7シーズン目を終え、3年半過ごしたロサンゼルス・レイカーズとの契約が終了。レイカーズとの再契約の可能性がなくなると、フリーエージェントとしていくつかの候補からロサンゼルス・クリッパーズを選び、移籍した。3年半前にワシントン・ウィザーズからレイカーズにトレードになったとき以来、キャリア2度目の移籍だった。
クリッパーズとの契約金は2年2800万ドル(約44億8000万円)、2年目はチームのオプションと報道されている。3年前にレイカーズと交わした契約(3年5100万ドル=約81億6000万円)より額も年数も少し減り、本人が当初望んでいた条件には及ばなかったかもしれない。それでも、年1400万ドル(約22億4000万円)はNBAの平均サラリーを上回る額だ。サラリーキャップの厳しい規制の影響で、リーグ全体にサラリー引き締めを意識するチームが増えているなかでは、悪くない条件だった。
八村がクリッパーズを選んだ理由は、いくつかあった。
そのひとつが引っ越しをすることなく同じロサンゼルスを拠点に活動できること。また、クリッパーズが若いチームに変わろうとしているタイミングで、より大きな役割を与えられる可能性も魅力的だった。何よりも、八村自身が大事にしている「プレーヤーファースト」の精神を持っていると感じられたのが、大きなポイントだった。
7月に公開された自身のVlog(ブイログ)でクリッパーズの魅力について語る中で、八村はこう話していた。
「ほかのNBA選手と話している時でも、クリッパーズのオーガニゼーション(組織)のすばらしさ、プレーヤーファースト精神がある(とみんなが評価している)」
八村がかつて、「プレーヤーファースト精神」こそが一流チームの価値観だと、熱く語っていたのを覚えている人もいるのではないだろうか。2024年11月、彼が日本代表の運営体制に対して公に苦言を呈したときのことだ。当時の日本バスケットボール協会に足りないのがその精神だと、八村は語っていた。
「(日本代表に)プレーヤーファーストって精神が見られない。僕もいろんなオーガニゼーションにいて、いいオーガニゼーションはプレーヤーが集中してプレーできるように考えながらやっていて、だからこそ強くなって、それによってお金が入ってくる」と、プレーヤーファーストを大事にすることで組織に好循環が生まれると語っていた。
去年夏に日本バスケットボール協会会長に就任することが決まっていた島田慎二と日本で会って、協会や日本代表の今後について話し合ったときも、八村はまずはプレーヤーファースト精神を大事にしてほしいと伝えたのだという。
「(希望として伝えたのは)プレーヤーファースト精神ですよね。そこが一番大事じゃないかなと思う。大きい舞台でやっていればやっているほど、僕はそういうのを感じる。ゴンザガ大の時もそうですし。NBAに入っても、いいチームっていうのはプレーヤーファーストの精神があるからこそ、いいチームになっていく、いいオーガニゼーションになると思うんで。 そこは島田さんに言いました」
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著者プロフィール
宮地陽子 (みやじ・ようこ)
スポーツライター。東京都出身。アメリカを拠点にNBA取材歴30年余。アメリカで活動する日本人選手やバスケットボール国際大会も取材。著書に『The Man〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)、2023年1月発売の共著に『スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ』(集英社)。


