ターニングポイントを嗅ぎ分ける「勝負師・錦織圭」の資質 (3ページ目)
「試合の動画を見てなんとなくイメージはあったが、初めての相手というのは、なかなか読めない。特に最初は、サーブのコースが読めなかった」
ランキングで大きく上回る錦織は、「失うものはない」と言っていたゴファンの攻撃の前に、立ち上がりはやや劣勢を強いられた。だが、その競った展開の中、冒頭で述べたひとつのポイントが、試合の流れを決する大きな分水嶺となる。長いストローク戦の行方は、得てしてその後の趨勢(すうせい)を決めかねない。ターニングポイントの匂いを嗅ぎ取り、集中力を高めて一気に畳みかけた錦織の「勝負師」としての資質が光った場面であった。
さらに第2セットでは、錦織は第1セットとは正反対の展開の中、流れを反転させる力をも示した。ゴファンがゲームカウント1-0とした第2セットの第2ゲーム。21本のラリー戦を落とした錦織は、続くポイントでダブルフォールトを犯し、相手に先にブレークを許す。
しかし、次の相手のサービスゲームで、錦織は再びギアを上げてポイント先行し、即座にブレークバックに成功。その後も、25歳の世界5位は反撃の手を緩めず、このブレークを機に怒涛の6ゲーム連取を遂げた。
「もし、0-3になっていたら、相手も良いプレイが続いていたので、セットも取られていたと思う。あのゲームをしっかりブレークできて、流れを自分のほうに取り戻せた」
もうひとつのターニングポイントをそう振り返る錦織は、「大事なところで集中できるのが、最近の強みだと思います」と、さらりと口にした。
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