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クルム伊達公子がウインブルドンで手にした
「新たなモチベーション」 (2ページ目)

  • 神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi photo by Ko Hitoshi

 42歳281日での2回戦勝利は、オープン化(プロ解禁)以降、ウインブルドンでは最年長記録。勝利後、これまでの2回戦最年長勝利者(39歳362日/1985年に記録)であるイギリスの名選手バージニア・ウェードから祝福を受け、クルム伊達はウインブルドンの歴史にその名を残すこととなった。

「(ウインブルドンは)昔から勝ちたいと思ってきたグランドスラム。今の年齢で、今の状況で3回戦に来られたのは、奇跡に近いです。それが現実に起きて、喜ばないわけがない。ここまでは、自分にいい風が吹いていたと思う」

 一緒にワールドツアーを回っている中野陽夫コーチも、クルム伊達の新記録を喜んだ。
「年齢は考えていないから、最年長記録と聞いても、そうなんだという感じだけど、ひとつひとつが歴史になるわけですから、重みを感じながら、これからも頑張ってほしい」

 そして、3回戦は前回優勝者で第1シードのセリーナ・ウイリアムズとの対戦。試合は、予定されていたナンバー1コートの進行が遅れたため、急きょセンターコートの第4試合に変更となり、さらに、20時を過ぎていたため、屋根を閉め照明を点灯させたナイトマッチとなった。

「リターンがしっかり返れば、ストローク戦で互角にいけると思う。サーブが返せないと競れないから、そこまでいけるかどうか」。この試合前に中野コーチはこう語っていたが、セリーナはこの試合最速の時速189キロのサーブを打ち込み、ダウンザラインへのリターンを叩き込むなど、持ち前のパワーでクルム伊達を圧倒。ただ、随所にライジングを駆使したクルム伊達らしいカウンターショットから、ネットプレイにつなげる場面も見られ、センターコートの観客をわかせた。

「彼女(クルム伊達)は、本当にボールを早く捕える。しかもフラットで打つ。時々振り遅れてしまった。彼女は本当にアグレッシブなスタイルでプレイした。体がフィットしているし、尊敬に値する」(セリーナ)

 結局、サービスエース8本を含む28本のウィナーを決めたセリーナが、6-2、6-0と、1時間1分でクルム伊達を破った。これでセリーナは、34連勝となり、さらにキャリアマッチ勝利600勝に到達。31歳の最年長世界ナンバーワンの勢いはとどまるところを知らない。

「(セリーナに)パワーやスピードで上回られて、自分の展開に持っていけないことは百も承知だった。普通にやっても勝ち目はない相手だったので、長いラリーをしようとか、ゲームをたくさん取ろうとか一切考えていなかった。勝てるチャンスを見出すために何をしなくてはいけないかを判断する中で、当然リスクも冒していたが、思うようにはいかなかった。私なりに、(センターコートで)楽しめたと断言できるほどではないけれど、内容のある試合ができたと思っています」(クルム伊達)

 グランドスラムでの優勝16回を誇るセリーナに対して、クルム伊達は試合前、半ばジョーク気味に「彼女とはできれば対戦を避けたかった」と語っていたが、対戦後に気持ちの変化が生じたのか、「またセリーナと対戦したい」と発言。

「(何かを)つかんだというところまではいっていないですけど、ラリーに持ち込めれば、想像していたよりも自分のテニスができる可能性を感じた」という。

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