2013.07.01

【テニス】錦織圭がウインブルドンで確認した「トップ10」より大事なもの

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • 神仁司●写真 photo by Ko Hitoshi

接戦の末に3回戦で5度目のウインブルドンを終えた錦織圭 ドキリとすると同時に、やはりとも思える言葉だった。

「正直、今日、試合前はリタイアするかなと思うような状況だった」

 左ひざと右足首に巻かれたサポーターは、すでに見慣れたものとなりつつある。加えてこの日は、腰から背中にかけて縦横にテーピングが貼られていた。2013年ウインブルドン選手権、アンドレアス・セッピ戦で喫したフルセットの惜敗——。「ベスト8以上を狙いたい」と挑んだ錦織圭の5度目のウインブルドン挑戦は、昨年と同様、3回戦で閉幕した。

 その才能は疑いようがないものの、常にケガが最大の不安材料である錦織にとって、今年のウインブルドンは大会そのものに不吉な影がつきまとった。まだ折り返し地点にも達しない大会5日目の時点で、棄権した選手の数は男女合計11名。試合中に転倒する選手の多さが話題となったが、ビクトリア・アザレンカ(世界ランキング2位)やジョーウィルフリード・ツォンガ(同7位)をはじめ、棄権理由の多くが「ひざの負傷であること」も目を引いている。試合中に3度も転倒したマリア・シャラポワが、「このコートは滑りすぎて危険だ」と訴えたこともあり、例年より芝のコンディションが悪いのではと、ささやかれていた。
 
 錦織は芝の問題を責めはしないものの、やはりウインブルドンに入ってから、以前から抱えていたひざの痛みが一層増したことを明かしていた。芝のコートは、ハードやクレーコートに比べるとボールが低く弾み、球足が速い。そのためウインブルドンでは、通常より深く踏み込んでひざを曲げ、腰を落として打つことが要求される。錦織も、芝が選手に課す負担の大きさを、次のように語っていた。

「やはりしゃがむのと、急なストップをしなくてはいけないこともあり、ハードコートとはまた違う、ひざへの負担がかかる。ひざを痛めている選手が多いことと、芝の関係はあると思う」

 以前からの負傷箇所であるひざや足首の痛みの増加、そしてそれらの箇所を庇(かば)いながらプレイを続けてきたため、当然のようにしわ寄せを受けた腰や背中の張りや痛み——。戦いの最中での負傷につき多くを語らなかったが、実際には錦織も、満身創痍の3回戦進出だったようだ。