2013.06.10

【テニス】前人未到の全仏V8。ナダルが赤土で最強な理由

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AP/AFLO

今シーズンは全仏を含め9大会に出場し7勝を挙げているラファエル・ナダル 一年ぶりにかじったトロフィーは、果たしてどんな味がしただろうか?小雨の雫(しずく)を光らせ輝く銀色の"マスケティーズ・カップ(男子優勝トロフィー)"は、正しき所有者の手に抱かれ、どこか居心地が良さそうにすら見える。

 6月9日。パリ郊外のローランギャロスで、128名の選手が2週間に及び熱戦を繰り広げた全仏オープンは、ラファエル・ナダルの4連覇で幕を閉じた。同大会に9度出場してきたナダルにとり、これが、8度目の戴冠である。

 「赤土の王」の異名を取るラファエル・ナダルの"全仏史上最強"への旅は、20年以上の月日を遡(さかのぼ)る少年の日に始まっている。イベリア半島の先端に浮かぶマヨルカ島で、地中海特有の鋭い日差しを浴びながら、少年は赤土の上で来る日も来る日も、黄色いボールを打ち続けていた。スペインを代表するサッカー選手ミゲル・アンヘラ・ナダルを叔父に持ち、そのDNAを色濃く受け継ぐラファエルは、もうひとりの叔父・トニーの指導のもと4歳からテニスを始めている。

 トニーのテニス指導哲学、あるいは人生の教訓は徹底していた。

 例え練習でも絶対に手を抜かないこと、対戦相手に敬意を払うこと、そして謙虚な気持ちを忘れぬこと――。ナダルが「ものすごく怖かった」と振り返るトニーの厳格さを物語るエピソードが、数多くある。子供の頃、サッカーの試合で勝って大喜びしたラファエルに「相手に失礼だ」と激高したこと。ゴルフ場でラウンドの順番待ちをしていた時、ラファエルを優先させようとした先方の申し出を断らせ、「お前がテニスで強いことと、ゴルフで順番を待つことは何の関連性もない」と叱ったこと。4歳から今に至るまで師事する叔父の薫陶(くんとう)は、ラファエル・ナダルというテニス選手の揺るぎなき土台となっている。